第6話

 しばらくお昼寝ひるねをしたサエちゃんがきると部屋へやはずいぶん薄暗うすくらくなっていました。

「もう、よる?」

「サエちゃん、きたとたんによるはないでしょ。天気てんきわるいからくらいね。まだ、4だよ。」

のぶくんは部屋へや電気でんきをパチンとけました。

「まだよるじゃないよ。してして。」

サエちゃんがいます。電気でんきいた部屋へやはもうすっかりよる部屋へやでした。

いまきたばかりだもん。まだないもん。ママはどこにいるの?」

サエちゃんはソファからすとキッチンへあるいてきます。

「ママ、ママ。」

でもいつもの返事へんじはありません。

「ママがいない、ママはどこ?」

サエちゃんがまたなみだをいっぱいためてもどってました。

「ママは投票とうひょうって、それから本家ほんけにいるんだとおもう。」

のぶくんがサエちゃんにこたえました。

本家ほんけ?」

「そう、商店街しょうてんがいのおじいちゃんちだよ。」

「なんで?」

「だから、選挙せんきょだって。」

「せんきょってなあに?」

「おじいちゃんがやってるんだよ。ママはそのお手伝てつだい。」

「おじいちゃんはなにをやってるの?」

ここで、のぶくんも言葉ことばまってしまいました。市議会議員選挙しぎかいぎいんせんきょわれてもなんのことだかわかりません。

「とにかく、いそがしいんだよ。だからママもお手伝てつだいにってるんだ。」

サエちゃんはかろうじてなみだ一粒ひとつぶこぼしただけで、きませんでした。でも、こういながらのぶくんのそばってました。

「サエちゃん、さびしい。」

「うん。さびしいね。」

のぶくんも素直すなおうとサエちゃんとならんでソファにすわりりました。部屋へやしずかです。しずかすぎてこわいいです。

 トルゥ〜! トルゥ〜!

ふたりは同時どうじにビクッとしてがりそうになりました。電話でんわです。

「サエちゃんがる。」

サエちゃんが電話でんわはしりました。

「もしもし・・・。」

その途端とたんサエちゃんのかおがパッとあかるくなりました。くもそらからお日様ひさまたみたいでした。

「うん、うん・・・。」

サエちゃんは電話でんわをのぶくんにわたしました。

「のぶくん、ゴメンね。おじいさんのいえいそがしくてけられないんだ。」

そのこえいてのぶくんのかおもパッとあかるくなりました。電話でんわいたのぶくんはサエちゃんにママにわれたことをはなしました。

「あのね、ママがね、今日きょうばんはん本家ほんけべるから、6になったら本家ほんけなさいって。」

本家ほんけでごはん? キャッ。」

なぜかサエちゃんはキャッとこえげました。

「うん。だから6になったら出掛でかけるよ。」

「おかけ、おかけ。」

 そとはビュービューかぜいています。でもあめってなくて外出がいしゅつ問題もんだいなさそうでした。

 それに本家ほんけは、おとなりさんとそのおとなりさんとそのまたおとなりさんのまえとうって児童公園じどうこうえんのところをがってさかくだって、商店街しょうてんがいなかをちょっとだけあるいたところにありました。ほんの5ふんくらいです。みちだって間違まちがえようがありません。

 ママにわれたように、サエちゃんのをしっかりにぎってそれだけあるけばいいんです。

 あめっていませんが、のぶくんにはかぜはどんどんつよくなっているようにおもいました。サエちゃんがさっきってただれかいるというのもになりしました。のぶくんはむねがドキドキしはじめていました。

 それでのぶくんは何度なんどもトイレにきました。のぶくんとサエちゃんはいえなか何度なんど戸締とじまりを確認かくにんしてあるきました。


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