強運者の強運
さて、戦争一日目が終了した現時点で、ほとんど――いや、まったく語られることのなかったこの二人についてだが。
まずこの男、
そして
とくれば次は当然、彼ともう一人の対戦をお送りするべきだったのだろうが、残念ながら――いや、幸運なことに、彼はどの参加者とも会わなかった。
それどころか熾天使と銃天使、及び白雪姫と屍女帝の戦いを観戦するほどの余裕すらあり、彼は完全に、この戦場を観光地とさえ思っているのではないかという行動を繰り返していた。
出店という出店に立ち寄って買い食いをし、歩いていれば必然的に財布と言う財布を拾って我が物とし、何か事件が起こっていると知ればすぐに野次馬根性で現場に向かう。
彼一人、戦場にいるというのにまったく緊張感を感じさせないため、誰も彼を参加者だと思う者はない。
戦争が始まるというのにわざわざやって来た、変わり者の観光客にしか思われてなく、バレることもなかった。
何せ参加者の証である刻印は背中にあり、人前で服を脱ぐようなことさえなければバレるはずもなかったのである。
戦争一日目、結局彼は何事もなく、何もないままに終えてしまった。
特別すべき事項も何もない。
残念ながら彼は強運過ぎて、何も伝えることがないという報告書そのものの定義を疑わせる一日を過ごしただけで、終わってしまったのだった。
なので話はもう一人の、魔術学園生徒へと移るのだが――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます