夢待ち人

勝利だギューちゃん

第1話

幼馴染の男の子、悟(さとる)くんの家を訪ねた。

幼稚園の頃からの付き合いなので、もう10数年になる・・・


「亜衣(あい)ちゃん、いらっしゃい」

おばさんが出迎えてくれる。

「おじゃまします」

靴を揃えて、お邪魔する・・・


まあ、普段から勝手に出入りしている関係なんだけど・・・


「悟くん、いますか?」

「部屋にいるわよ。バカ息子の事、よろしくね」

「はーい」


そうやって悟くんの部屋をノックする。

「どうぞ」

声が聞えた。


ドアを開ける。

「悟くん」

彼は、ベットであおむけに寝ていた・・・


「亜衣か・・・」

「うん」

悟くんが寝ているベットに腰を下ろす。


「どうしたの?」

「ちょっとな・・・」

悟くんは、真剣な表情をしている・・・


彼はとても、大人しい男の子・・・

小さい頃はとても泣き虫で、よく私に甘えていた・・・


私は彼の保護者みたいで、よく「悟のママ」と言われた・・・

でも、それも嬉しかったのを覚えている・・・


今は、少しだけ男の子らしくなったかな・・・


「ねえ、悟くん」

「ん・・・」

「行き詰ってる?」

「・・・ああ・・・」

悟くんは、小さい頃から、絵がとても上手かった。

よく表彰されていた・・・


周りのみんなも、彼の絵は認めていて感動していた。

私は、彼の幼馴染であることが羨ましかった・・・


「なあ、亜衣・・・」

「俺・・・」

「言わなくていいよ・・・」

「どうして?」

「幼馴染だもん・・・わかるよ・・・」

彼の手に、そっと手を重ねた・・・


「悟くん・・・」

「なに・・・」

「私たちは、高校生・・・未来は、無限大だよ・・・」

「ああ」

悟くんは、瞳をとじ、笑みを浮かべた・・・


「悟、電話よ」

「こっちでとるよ」

悟くんは、部屋の子機に手をやった・・・


何かを話しているようだ・・・


しばらくして、悟くんは、電話を切った・・・


「誰から?」

「出版社」

「どうして?」

「イラストの投稿をした・・・」

「何だって」


しばらくして、悟くんは口を開いた


「待ち人が来た」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢待ち人 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る