第6話 危ない服には不思議な力が働く
◇ ◇ ◇
とりあえず執事に、ユウナの服を持って僕たちのいる二階に上がるように言う。
ユウナは
ひらっとしたミニスカートが申し訳程度についた、結局露出度の高い服をセバスから受け取って着替える。
――童貞を殺す服かな…??? でも首の部分がタートルネックになっていない。え、これ…服として成り立つの?
着替える間、僕はイロハとリーンに布団を被せられ後ろを向くように言われた。
布団を被るなら、後ろを向く必要はないのではないかと思ったが、なんか恐いので言うとおりにしておいた。
「あの…、もっと露出の低い服はなかったんですか?」
イロハがセバスに疑問を投げかける。僕の不安とは裏腹に、その服は謎の力でぴったりと姫の体に張り付いている。
「今日はこの服しか持ってきていないのです。申し訳ありません」
「そうですか…」
殊勝な顔でさらっと嘘を吐いたなこの爺。
こんな痴女みたいな服を着て出歩く姫がいるか!
……いや、二次元の中だと割といるか…?
でも僕は、馬車の中に数日分の普段着と着替えを持っているのを知っているんだぞ。
その中にはもっと露出の低いいわゆるお姫様然とした普通の服があるはずだ。
しかしそう言うわけにいかず、とりあえずこの場はその件を追及しない。
「一階に移動しましょう。この部屋は椅子も少ないですし…」
二階には寝室と客室以外には武器等の部屋があり、一階にはキッチン風呂トイレその他生活に必要な部屋が揃っている。
ソファというには簡素な長椅子に座る。
「突然の…思いもよらない訪問に驚きましたので、失礼をお詫びします。ユウナ姫」
僕の作ったキャラクターとはいえ、この世界では隣国の姫、ツッコんだり失礼な態度を取ったりしたことを詫びる。
「いえ、お気にならないで下さいませ。わたくしが
そうだぞ、一国の姫がとんでもない作戦に乗ってあんな恰好で男の上に不用意に乗るなんて…。
「殿方の上に乗って肌を触れ合わせたら、子どもができるものとばかり…。セバスから…そう聞いておりましたもので…」
ニュアンスによっては間違えてない! 間違えてないけど間違えてる!
でも、その話題まだ続けるの?!
「…そのお話は、またセバスさんとじっっっくり話したいので、先ほどあなたが
「わかりましたわ…」
素直な女の子で助かる。
「そうですか、では後程大切なお話を私とじっくりと致しましょう」
おい、爺てめえこの野郎。
なにニヤニヤしてるんだ。
お前とじっくりする話はユウナとの将来とか子どもの話じゃないからな!!
横でイロハがまた少しずつ怒りゲージを上げてきてるのが分かるから、この話はやめたいだけだ!
イロハはこんなに怒りっぽいキャラに設定した覚えはないんだけど(どちらかといえば優しく柔和な…今でいうところの『バブみ』を感じるキャラに設定したはず)、実際ずっと怒りっぱなしでキレキャラの幼馴染みたいになってしまっているからどうしたものか…。
妖精は僕の肩に静かに座っているが、それがまた不気味だ。ツッコむタイミングを伺っているようにも見える。
「今日いらっしゃった本来の目的は、何かの依頼ではなかったですか?」
本来話したかった話題に戻す。いちいち話の腰を折られてはいつまで経っても話が進まない。
「その説明は、私の方から――」
セバスがそう切り出したのを
「いえ、わたくしが話しますわ、セバス…。実はわたくしたちの国、サント王国に…サンダードラゴンが現れましたの」
「サンダードラゴンですか…」
――ドラゴン。
どの冒険世界でも大体存在するモンスター。
堅い鱗、鋭い牙、そして瞳孔が縦に開いた瞳を持つ、この世界の中ではほぼ最強のまも…
数種類のドラゴンがご多分に漏れずこの世界にも存在する。
サンダードラゴンの体色は銀色。だが雷を纏い飛ぶため、捕食行動中は視認距離によって青白や紫、オレンジ、金色に見えることもある。
飛び回りながら気まぐれに雷を落とし、落ちた先にいる生物を捕食する。
雷が落ちた先の生物であれば何でも捕食し、それは動物、人のみならず自分と同種であるはずの
あまり高い知能を持っているとは言えない種だ。
知性のあるドラゴンも存在するが、サンダードラゴンは気象の一種というのがこの世界での常識で、気が済むまで捕食させ飛び去るのを待つよりほかはない。
ただ、サンダードラゴンが現れる土地では、人間はサンダードラゴンが現れた際に対天災用の『シールド』を張ったいくつかの砦へと分散して避難するため、サンダードラゴンは野生生物か
運の悪い時には、『シールド』のない場所に避難させている家畜も被害にあうことがあるが、稀である。
なので、どちらかといえば人間に有用な
ヨルンは隣国ではあるがサンダードラゴンは現れない。
ヨルンの国には
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