第4話 謎の美少女には正体を隠した執事がいる
引いた涙がまた出そうになる。
でもさっきの妖精のツッコミ僕にしか聞こえてないんだよね!
他の人から見たら誰も何も言ってないのにやめろおおおお! って2回目叫んだのってバカみたいじゃない?
僕バカみたいじゃない???
――痛い。
やっぱり僕にとっては仮でもなんでもなかった幼馴染 (タカアキの)が何か言ってるようだ。けど、僕にはもう彼女が何を言っているのか聞こえなかった。
――痛い。
死んでも尚、黒歴史は僕に付きまとうのか?
――死んだら、この痛いのは終わりだと思っていたのに。
そうだ、この世界でも死のう。いや、黙っていても村民その他この世界の皆様が僕を殺してくれるだろう。
――僕はその時を粛々と待てばいいだけだ。
どうやらこの世界に来た時点ですでに世界中が敵なのだから…。
死んだら僕は今度こそ無に帰り、この世界に溶け込み、自我は世界と一つになり、万世の遍くものにふりそそ…。
「あの…わたくしの名前はユウナ・デ・サントーニュ・ベールと申します。サント王国の第一王女ですわ。ユウナとお呼び下さい、タカアキ様」
「あ、はい」
僕を脳内トリップから引き戻したのは可憐でしかし凛とした佇まいの声。
そういえばいたね!!
ごめんなんかずっと抱きしめっぱなしで放置みたいになっちゃって!
膝から降ろすタイミングがちょっとなくて…。
とりあえず、掛布団を掛けて目と心臓に悪い服装を隠す。
でも何でこのタイミングで、このピンク髪の爆乳王女は自己紹介しちゃったの!?
そんな空気だった!?
心なしか頬を染めてうっとりしてるのはなんで?
今の会話聞いてたよね? 僕は君の求めていた設定マシマシの最強勇者タカアキ君じゃないんだよ。
それどころかそのタカアキ君を消しちゃったの僕のせいかもしれない…。
あっ、もしかして前のタカアキ君が好きだった感じ? 引きずってる感じ?
まあ、外見は一緒だもんね!
ほんとごめんね、なんか助けを求めてるみたいだけど、君が求めている聖人君子の完璧超人アイドルタカアキ君じゃなくてごめんね…。
あとピンク髪だからってちょっとエッチな立ち位置のキャラにしてごめんね…。
キャラを立てないと! と思ってたら逆に型にハマっちゃったっていうか…。
申し訳なさから少ししょんぼりしていると
「姫様ー!」
外から何やら声が聞こえる。
ん? こっちに向かって誰か叫んでるのか?
――うっ! 胸が痛い。
霧散したはずの『黒歴史』の腕が伸びてつんつんと僕の心臓をつついてくる。
なんだこれ、『黒歴史』の呪いみたいなのがもしかして掛かってる?
ああ~…刺激されて封印した筈の記憶が蘇ってくるよぉ…。
ゾンビのように…まるでゾンビのように…!!!
タカアキたちが住む村がある国ヨルンは、10の村の連邦体制でありそれぞれが村単位で政や
国としての体裁の為に纏まってはいるが村同士は独立しており、関わるのは
国の長は1年を目途に、特に何もなければ決定されている順に各村の長が交代して執務にあたる。
その間
この国は、優秀な
そしてサント王国はタカアキの住むヨルンの東にある隣国だ。
壁と山に囲まれた堅牢な国で、前王の手腕が高く評価されている。
この世界には国が7つあるが、それぞれの国は協力こそすれ対立することは表だってはない。
あるとすれば魔邪王への対処の方向性や
国同士の対立によって疲弊することを避けたいのはどの国も同じ。
あくまでも対立すべきは魔邪王だけであるべきとしており(七ヶ国協議憲章 第1章 目的及び原則に記載)、魔邪王が住むとされる
大型種などが出た際に、出没国を機に乗じて襲うようなことがあれば、他の国が全て組んでその国を消滅させる権限を持っている。
存在する七つの国一つ一つはそれほど大きくなく、みなそれぞれに特徴があるが、対
また、どの国にも属さない離れ小島が四つ。封印はその神が
国同士の行き来に関しては、国ごとに
指輪の形をしており、七ヶ国すべての
が、なくても行き来でき、有名無実の代物となっている。
(
――ツッコんでくると思ってたよ!!
窓を開けて外を見ると、ザ・爺やといった立ち姿の老紳士がこちらに手を振っている。
「執事のセバスですわ、タカアキ様」
彼は姫付の執事、セバス。
たしか、ええと…フルネームはセバス・サンク・ノール。
そして執事という立ち位置で僕に近づいてくる…隣国の前王だ。
隣国サント王国の! 前王!! ユウナの祖父だ!!!
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