鏡の向こうで謎を解いたら

森くうひ

序章

「君は彼の夢の中だけのものなんだ。君が本物じゃないって、自分でも分かってるだろ」

「私は本物よ!」

そう言って、アリスは泣き出してしまいました。

「泣いたりしても、これっぽっちも本物らしくならないぞ」

トウィードルディーが言いました。

「泣くことなんてありゃしない」

「でも、もし私が本当はここにこうしていないんだったら――」

ばかげたやり取りに思えて、半分泣き笑いになりながら、アリスが言いました。

「――こんな風に泣く事だって、できないはずだもの」

「まさか、それが本物の涙だと思ってるわけじゃなかろうね?」

嘲るような声で、トウィードルダムが口を挟みました。




――『鏡の国のアリス』より(著者訳)

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