第2部 { ファンタジスタな奴ら〖Wild Challenger〗 }
開幕 『光と風 ~無限大~ 』
いつも真っ黒な闇の中にいた。
目に視えない何かがいつも邪魔だった。
外からはカゴの中の様子を見れるのか?
心が砕けそうな言葉と野次だけが飛んでくる。
次第にその言葉はカゴを締め付ける鎖となって、この空間を縮めていく。
どれだけ暴れた事か。どれだけ叫んだ事か。
カゴは弱者の反撃なんて平気で呑み込んでしまう。くだらない弱者の戯言など闇に葬って嘲笑うだけ。無駄だった。何をしても無駄。
暴れれば暴れるほど、外からの圧力は大きくなる一方だった。
無駄な抵抗をすればカゴを潰しにかかってくるし、無駄な事を口にしたならば罵詈雑言の嵐がカゴの中で吹き荒れる。
ずっと座り込んでいた。
一体何年もの間。この暗闇の中で大人しくしていただろうか。
目を開けたところで景色が変わらないのなら……何をしても無駄なのならばと気がついた時にはうずくまり瞳を閉じていた。
景色から目を背けたところでも結局、暴言は矢となって突き刺さる。
どれだけ静かになったところでカゴは小さくなっていく。中でうずくまる自分を押し潰し消滅させるまで。
----苦しかった。
こんなに苦しい思いをするのなら……いっそ楽になろうかなんて思いもした。
自分の命を終わらせる手段はいくらでもあった。
この両手で首を絞めればすぐにでも終わらせられたし、今以上に暴れたり叫んだりすれば一瞬でカゴが小さくなってくれるかもしれない。
だけど出来なかった。
怖かった。単純な事だ、死ぬのは怖い。
だけどそれ以上に幸せになりたくて
いつかカゴの外に出れるんじゃないかと胸の中で希望が芽生えてしまっていて、その光がいつも忘れられなかった。
苦しい。生きるのも死ぬのも苦しい。
だから願うしかなかった……助けてほしいと。
----ボクは、どうして生まれてきたの?
カゴの暗闇に身を任せて暗黒へと静まり返っていく。
『俺と来い』
思わず顔を上げた。
声が聞こえた。出口のないカゴの外から異彩を放つ声が聞こえた。
いつも通り鳴り響く不協和音。その雑音の中に……一つだけ。
許されるのか。
生きることを罪だと裁かれた、こんな自分が助かることなんて許されるのか。
光が見えた。
暗闇しか見えなかったはずの空間。
その暗闇の先に少しずつだが大きくなっていく閃光が境界線のように瞳に入る。
ゆっくりと歩く。
自分の体には鎖のように絡みついた見えない何かがある。
ここから先に生かせないと……黄泉の国の死腕のように幾つも幾つも、自分の体にしがみついたり取り押さえたりを繰り返して、中々先に行くことを許さない。
その言葉。その返答。答えは一つだ。
『生きたい。そ君について行きたい。』
ボクを助けてくれると言ってくれた君に会いたい。
君と一緒に光を見たい。
鎖のように絡みつく何かを解いていく。このカゴの中のルールなんて知ったことではない。もう先に進むと決めたのだ。メソメソするのはもう辞めだ。
次第にカゴは粉々に砕け散っていく。
光がさらに大きくなっていく。扉のように広がっていく光の中に……身を任せて、思いっきり飛び込んだ。
「おはよう」
ここまで太陽の日差しが心地よいと感じたことがあっただろうか。
光り輝く太陽を背に、自分の視界に入ったものは見たこともない新しい世界。
シーバ村のような田舎村とは違う……発展された魔法都市であった。
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