第14話

午後の授業は俺は全く聞いていなかった。2号が口にした「玉子焼き」が気になったからだ。そして一つの仮説を立てた。それなら上の人が俺と同じクラスにした理由も分かる気がした。だかその仮説が正しかったとして…それが俺に対して何をもたらすのか…全く想像も検討も付かなかった。試しに俺は帰り際に2号にさり気なく聞いてみた。

「なあ、佐藤君って玉子焼き好きなん?さっき俺の弁当の玉子焼きの話をしてた時、すごく興味津々に見えたからさ」

「そんな風に見えた?俺、実は玉子焼きよりスクランブルエッグ派なんだ。でも、あの玉子焼き美味しそうに見えたから」

「そうか?母さん、自称料理得意じゃないなんだけど笑。普通の市販の玉子焼きの方が綺麗なことないか?俺が見慣れてるからかな?」母さんの玉子焼きは絶品。だけど、敢えて俺は貶してみた。

「そんなことないと思うけどな。市販のって綺麗だけど全く手作り感がなくて…まあそりゃ工場で作るんだし当たり前だけど…普通に美味しいし食べれるけど、なんか違うんだよね」

「スクランブルエッグ派って言ったけど玉子焼きもよく家で食べる?」

「いや食べない、実は。それなら目玉焼き食べるね、作るの簡単だし」

「料理得意?する?」

「母さんいない時は仕方なくするけど、全く下手。よくあんなに上手く作れるよな。って母さんもだけど料理人の人とか尊敬するよ」

「それは同感。創作料理?とかみたいに誰も作ったことない料理作って、人に食べて貰って、美味しい♫って言って貰える。すごいよな。って思うもん」

「だよね、ステキな職業と思う。俺には無理だけど」

「ちなみにハンバーグは好き?」

「好き、よく食べるよ」

「そっか、じゃあ今度暇あったらハンバーグ食べに行く?美味しいお店知ってるから」

「いいね、テスト終わったらかな?よろしく」

「じゃあ先に帰るわ。部活頑張れよ」

俺は教室を出て一切振り返らずひたすら校門の外を目指した。振り返った先に2号がいたら…そんな恐怖を振り払うように。

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