第13話
2号に対する疑惑や不安が俺の中から薄れていく中、事件は起きた。
それは昼休み、弁当を食べている時。この学校には学食はない。お昼は弁当を持参するか購買で販売されるパンとかを買うかの2択になる。俺は妹との兼ね合いもあって毎日弁当。ごくたまに「弁当作れなかったから、ごめんね。」と母の由美子に謝られる時はあるが、しっかり者の母。それは月に一回あるかないかのことである。
昼食は席の近い者、仲の良い者が集まって食べるのが基本である。特に女子は。でも俺は今回の席替えで後ろの端、窓側ということもあり、食べ終わってグランドで遊ぶ生徒や景色を眺めながら一人お弁当を食べていた。
「あれ、佐藤君のお弁当の玉子焼き綺麗だね、美味しそう」話しかけて来たのは2号、佐藤真司だった。「そうか?別に普通の…どこの家でもある玉子焼きと思うけどな…もう食べ終わったの?」
「購買でパン買って食べたよ」
「そっか、少しは慣れた?」
「まあ、みんな優しいから。道とか何があるとかは全く分からないけど笑。今度教えてよ。っても俺、部活入っちゃったし、もうすぐテストあるし中々時間ないかもだけど。同じ佐藤同士仲良くしたいし笑」
「そだな、俺も仲良くしたい。テスト…勉強教えてほしい笑。俺、いつも副島に頼ってばっかで…まあ俺が何も言わなくても世話焼いて、ここ出るから。これは覚えとけ。とか情報くれるけど」
「彼、頭いいよね。俺も教えて貰おう」
そんな会話を2号として昼休みは終わった。
だが俺の中で疑惑が生まれてしまった。2号が口にした「玉子焼き」別にどのお弁当にも入ってるだろうし気にすることでもないかもしれない。でも俺は気になった。
実は母さん…由美子の自慢のこだわりの一品なのだ。特に際立って料理が上手いとも思わない。本人も自覚している。そんな由美子だが玉子焼きだけは小さい頃からずっと焼き続けて…上手く巻きたい…その一心だったらしい…それが身になり、俺が言うのも変だかプロ級の味と見た目をしている。と、いっても誰か友達に自慢して食べさせたこともないし、話題にすらなったこともない。だかアイツは俺の弁当を一目見て玉子焼きに目がいった。ちなみに今日の俺の弁当のメインのオカズはハンバーグ。しかも弁当の半分近くの面積を占めた特大ハンバーグ。それを無視してアイツは玉子焼きを褒めた。気にすることでもないのかもしれないが、消えかけた不安が俺の中で再び現れようとしていた。
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