きっと答えは出なくとも、

遥原春

序章 贖罪、返礼、自我

 大切なものを奪ってしまった罪はどう購えばいい?

 自分を救ってくれた人には何を返せばいい?

 同じく自分の大切なものを手放せばいい?

 同じくその人を救ってあげればいい?

 違う。そうじゃない。

 大切なものを手放したところで、奪ってしまったものは戻らない。

 救って欲しいほどの深刻な状況なんて、そうあるものじゃない。

 じゃあ、どうすればいい?

 相手の望むものを贈ればいい?

 じゃあ、もしもその相手にお前が欲しいと言われたら?

 自分の気持ちを全て殺して、その相手の物になるのが正解なのか?

 ほかに好意を寄せる人間がいたとしても、そうすることが正しいのか?

 いや、それだけのことをしてしまったのだから、それが正解なんだろうな。

 それでも。

 それでも俺は――

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