閉ざされた記憶

勝利だギューちゃん

第1話

「大丈夫だよ」

「えっ・・・」

「君はもう、1人で歩ける・・・」


目が覚めた・・・

ここはどこだ・・・

ベットに寝ている・・・

それはすぐにわかった・・・


右を見る。

窓がある・・・開いていた・・・

風が入ってくる・・・


他にはベットがない・・・

個室なのか・・・


しばらくすると、ナースさんらしき人が入ってきた・・・

こちらを見て驚いている・・・


(俺は、天然記念物か・・・)

皮肉でなく本気でそう思った・・・


珍しいのか・・・


しばらくして、そのナースさんが声をかけてきた・・・

「ここがどこだか、わかります・・・」

「病院・・・みたいですね・・・」

「・・・いえ、診療所です・・・」

「そうです・・・か・・・」

ナースさんは、続けた・・・


「自分の事・・・覚えていますか?」

「ええ、若草・・・若草茂・・・」

「そうですか・・・よかったです」

ナースさんは、笑みがこぼれた・・・


「あの・・・」

「何ですか?若草さん」

「他は思いだせないんです・・・」

「そうですか・・・待っててくださいね・・・」

ナースさんは、しばらくして、ひとりの女性を連れてきた・・・


女医さん・・・ではなさそうだ・・・


「若草さん・・・私はカウンセラーの、加藤です。

よろしくお願いします」

「・・・どうも・・・」

「今から、いくつかの質問をします。

「はい」か「いいえ」で答えて下さい」

「わかりました」

それから、いくつかの質問を受けた・・・


でも、全て「いいえ」としか答えられなかった・・・


「ありがとうございました」

加藤さんは、問診票をしまうと、一枚の写真を取り出した。


「では、この人は覚えていますか?」

その写真には、ひとりの女性が映っていた・・・

見た目は20代前後か・・・さらさらロングヘアーが印象的だ・・・


でも・・・


「すいません・・・覚えていません・・・」

本当にわからなかった・・・ただ、とても懐かしかった・・・


その日はそれで終わった・・・


考えていた・・・

自分の名前以外は、思いだせない・・・


一体どうして、ここにいるんだ・・・

わからなかった・・・


その夜は、なかなか眠れなかった・・・

おそらく、かなり眠っていたのだろう・・・


しかし、いつの間にか・・・眠りに落ちた・・・


「ねえ・・・」

「何?」

「私の事、思いだせない?」

「・・・うん・・・ごめん・・・」

「いいのよそれで・・・もう、君に私はいらない・・・」

「えっ」

「後は君次第・・・」


目が覚めた・・・

ナースさんと、昨日の加藤さんだったか・・・

覗いている・・


他にも、お医者さんらしき人がいた・・・

他にも、警察らしき人もいた・・・


俺は、どうした・・・何か、犯罪でもしたのか・・・


そろって声をかけてきた・・・

「若草さん・・・思いだしたいですか?御自分の過去を・・・」


俺は迷った・・・思いだせるものなら思いだしたい・・・

でも・・・


「このままで・・・いいです・・・」


そういうと、何やら話し合いを始めた・・・

数分して、加藤さんが言った・・・


「わかりました。そのほうが、あなたの将来のためにも、いいでしょう・・・」

そう言って、全員が去っていた・・・


ただ最後に警察の人が、

「ご安心ください。あなたは犯罪者ではありません。全て正常です」

それだけを残していった・・・


正常というのは、加藤さんから聞いたのだろう・・・


それから数年・・・


俺は日常を取り戻したのか・・・

普通に生活をしている・・・


家族と思われる人も、友人を名乗る人も、支えになってくれている・・・


ただ、あの写真の女性には、口を閉ざす・・・

自分なりに調べてみたが、わからなかった・・・


ただ、時々夢に現れる。

「無理だけはしないでね」と・・・

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閉ざされた記憶 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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