77話Zero3/その後
市壁外縁部での戦闘から3日が経った。
幸いにもアレだけの戦闘をして死者は出てはいない。とはいえ重傷者がやたらと多く、やっと休めると思っていたアニエスさんの顔が、青ざめ引きつっていたのは言うまでもない。
最後の攻撃、俺はギリギリの所でプロテクトを展開。アンナも変身が解けただけで怪我という怪我はしていなかった。
だが一歩間違えば大怪我、最悪死んでいた。
分かっているつもりであった。2人は魔力によるダメージの肩代わりがあるとはいえ、死と隣合わせなのは分かっているつもりでいた。最近の事件を、戦闘を経て思う所がある。
2人を巻き込んで本当に良かったのだろうか、と。
「此処か……?」
ジェームズに話がある。と言われ裏路地にある寂れた喫茶店の前に来ていた。
奴らを追うにしても目的地が分からず、スターラリー王国に赴こうにも多くの手続きやもし足を運んだ所で情報が得られるか分からない以上動きづらい状態であった。
手を拱いている分けにも行かず、とりあえずドホドフさんの旧友である元情報屋の人に文を送り返事を待つこととなっていた。
扉を開けようとするも鍵がかかっており人の気配もない。
「間違えたか? けど、地図だと確かに……」
神妙な面持ちで独り言を言っていると、ジェームズの声が聞こえ目線を向ける。
「おぉ、ユニー速いな。待ってろ直ぐに開ける」
そう言って、紙袋を抱えた彼が鍵を持って歩いてくる。
「開けるって、実家か?」
「そ。もう店は開けてないけどな」
鍵を開け、扉を開くと寂れた外装とは打って変わって小奇麗な店内が小さな瞳に広がった。
パタパタと中に入って行くと、掃除が行き届いており何時でも開店出来る状態であると思えて仕方がなかった。
「ユニー、コーヒー飲むか? うまいぞ」
「あ、あぁ。貰うけど」
彼は奥まで歩いていき、紙袋を置くと俺の方を向いて、どうかしたか? と問いかけてくる。
あることを聞こうとするも思い留まり、なんでもない。と返していた。
「ほい。熱いから気をつけろよ」
数分後、小さいカップに注がれた珈琲を置かれた。
一緒に砂糖が入った小瓶と、ミルクが入ったカップも置かれる。
「ありがと。で、呼び出してまで話したい事ってなんだ? またスカートめくりか?」
嫌味っぽく言うと、彼は静かに笑った。
「だったら良かったんだけどな。というか、お前呼んでも、また裏切るだろ」
「当たり前だ」
「ッハ、堂々言い切るなよ」
彼は俺の前の椅子の腰掛け、カップを手に取ると口を付けこう続ける。
「本題とはちと違うが、まだ根に持ってるだろ」
「……まぁ、少しは。でも、円滑に事を進めるため、俺の行動を読んで敢えて言わなかった。って点は理解したから、大分マシにはなってる」
「なら、いい。俺が進言して、言わせなかった。だから、俺以外誰も悪くない。恨むなら俺にしろってだけだ」
彼の言い回しに対して何処か引っかかりを感じたが、口には出さなかった。
スプーン1杯分の砂糖を入れ珈琲を口に入れる。
ちと
「意外だ。うまい。こんな奴にこんな特技があったなんてー。みたいな事思ってるだろ」
「ノーコメント。で、本題は?」
「ルチアが帰ってくるまで待ってくれ。あーでも、そうだな。要件自体はお前が聞いたっていう国王についてと、カミーリアの現状。そして、燃えカスから入手出来た薬の話だ。多分」
あの後、ケンタウロスから聞いた話をアンナ、エミリアは勿論あの場に居て信頼がおけるリネ、ジェームズ、ルチアに話していた。
敵の戯言だろう。とその場に居たほとんどの人が予想していたが、ルチアだけは思い当たる節があるようで1人だけ反応が違っていた。
「でも、話してはくれなかったろ?」
だがその本人から言えない事もあるから口にできない。と断られていたのだ。
「伝書鳩飛ばしてな。確認取ったようなんだ。で、その事を話すからってお前を呼び出した。俺もまだ話しは聞いちゃいないから帰ってくるまで本題に入れない」
「なるほど。で、なんで俺なんだ?」
「第三皇女様のご指名だと」
話が急に飛び俺は混乱していた。
なぜ急に皇女様が出てくるんだ意味が分からんぞ。
「あ、そうだったな。第三皇女様ってのはセシリー様のことだ」
「いや、なんでそこでセシリーが出てくるのかが、分からんのだが」
「この辺りもそういや話してなかったんだったな。あの人の私兵にバッシュって奴いんだろ」
「あぁ、いるな」
セシリーの話だと、第二部隊の隊長で直属の護衛と部隊間でどうしても発生する隙を埋めるための部隊ですの~。とか言ってたけ。
「あいつと旧友なんだよ。だから元々はビランチャ出身」
そういう事か。となると情報源もセシリーになる分けか。
ガタンッ。という物音が2階から聞こえ俺達は上を見上げる。
「噂をしたらなんとやら。帰ってきたみたいだな」
ほどなくして、ルチアが店の奥から現れた。
「帰り。珈琲飲むか?」
「いらんよ。ユニーさんもおるみたいじゃね」
そう言って、歩いてくるとテーブルに1枚の紙を置いた。
「ほいなら、早速じゃけど話を始めます」
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