異世界魔法少女~転生したらマスコットでした~

猫缶珈琲

1部

1章

プロローグ

 寒い。体が寒い。

 次第に遠のく意識、掠れる視界でなんとか周囲を確認する。

 距離を取り囲むようにして出来ている人だかり、身体から流れる赤い液体。


「あ・・・・・・れ?」

 これ、死ぬのか?


 頭を走馬灯と呼ばれるモノが駆け巡り始める。

 楽しかったと問われるとそうでもなく、つまならなかったと聞かれるとそうでもない。

 物語にするほど語る事はない、だが悔いはある1人の男性の人生が終わりを告げようとしていた。


 ただ、バイトに向かってただけなのになんでこんな……。

 次第に気が遠のき、視界がブラックアウトした。


 あぁ……寒い……なぁ……。



 頭に誰かが語りかける。


『つまらない人生をやり直しませんか? このままですと貴方、童貞ですよ? 楽しい思い何もしてませんよ? 良いんですか? 今なら転生出来ますよ? お買い得ですよ?』


 と。何故死んだのか。それは分からないが最後の記憶から何かしらの事故と言う事は察する事ができた。そして転生してもいいらしい。

 目を開け、周囲を確認するが、黒い空間が広がっていた。周囲に光源は見当たらず、それでいて自身の体は視認出来ていた。

 普通の空間ではない。と考えるにはこれだけでも十分であった。


「したい、です」


 俺も、俺なんかも創作物のように転生をしてもいいらしい。


「転生して、ちやほやされ、たいです……!」


 本音を包み隠さず言った。


『分かりました。ご契約ありがとうございます』

「うん? けい、や……く?」


 契約という言葉ひとつで、一気にきな臭さを感じてしまった。


『転生する事を受理致します。新しい人生をどうぞ、謳歌してください』


「ちょっと待って、契約って!? ねぇ、契約って何!? 怖い、超怖いんだけど!」


 浮いていたような感覚があった身体が、一転し落下するような感覚が襲う。


「契約って何ぃぃいいい!?」


 手を上に差し伸ばし叫んだ声と身体は闇の中に消えていった。

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