青い夜

甘井ふたば

青い夜

 突然だが、俺の趣味を話すと皆は『変態』だと言う。俺のやってることがそこまで言われるのかは謎だが、言われるのだからそうなのだろう。共感してくれる同志もいるが、周りからどういわれようと関係ない。

 俺は俺の好きなことをやる。それだけだ。



 夕食を終えた後、ずっと兄の部屋で勉強を教わっていた。ふと時計に目をやると、そろそろ日を跨ごうとしていた。

「兄さん、もう部屋に戻るわ」

 そう会話を交わし、兄の部屋を出た。

 水分を一切取らず勉強漬けだったので、喉が渇いた。

 階段を下り、台所へ行く。

 冷蔵庫を開け、麦茶を取り出す。

 トトトトトトとコップにそれを注ぎ、麦茶のポットを冷蔵庫に戻す。

「んあ"ーっ」

 一気飲みをし、声を上げる。我ながらおっさんくさい気もするが、気にしない。

 あ、親を起こしちゃってないよな?

 心配になり、親の寝室の扉をそっと開ける。

 父は鼾をかいていて、母は深い睡眠に入っている。

 親が寝ていたことを確認し、二階にある自分の部屋へ向かう。ドアノブに手を掛け、回す。

 扉が開けるといつも通りの自分の部屋だ。

 部屋に入って右には学習机。左にはベットが置いてある。学習机の後ろには本棚が置いてあるが、兄も読みに来るのでよく巻数の順番とかがバラバラになるのだ。今日も来たのだろう。順番がバラバラになっている。なんで数学と数学の参考書の間に「漫画で分かる織田信長」が入ってるんだよ。

 xに織田信長を代入する気か!

 素直にやめてほしい。


 そんなことを考えながら扉を閉め、部屋の鍵を掛けた。

 これから俺はいつものをするのだ。親にばれたらなんて言われるか分からないからな!

 俺はベットの下に手を入れ、例の本を掴み出す。やっぱこれがなければな! 俺の相棒!ちゅっちゅ!


 机に戻り、机の引き出しを開けると一冊の本と付箋が入っていた。それには「お前の好みがあったので買っておいたぞ」と兄の字で書いてあった。


 兄さん…!


 だが、今夜の俺のおともはこれだと決めているんだ! 悪いな兄さん――――




 あの夜から数日たった日、家に帰ると母親から、

「あんたの部屋掃除機掛けておいたからね!」

 そう言われた。俺はまさかと思い、階段を駆け上がる。

 俺はドアノブに手を掛ける。

 ドアノブを回し、目を閉じ、勢いよく部屋に入った。

 目を恐る恐る開ける。


 部屋に入るとのベットの下に隠しておいた例の本と、母親からのメッセージが置いてあった。


 ああ、なんてこった、やっぱりばれていたのか。

 俺の恋人であり、親友。そして、兄弟。



 そう、が!




 俺は項垂れたまま、母親からのメッセージを読む。


『いい加減勉強ばかりしてないで外に出て体を動かしなさい。勉強もほどほどに。あと、欲しがってた買っておいたよ』


 母さん……!

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