第二ラウンド『最底辺ボクサー爆誕!!』

次の日… 

まだ太陽が出ていないが暗い空が紺色に変化していた朝

サムは、車に乗りチャールズの家へ向かっていた。

「さむ…サムだけに」

真冬の早朝は、寒く車内暖房をつけていても一向に温まる気配がなく、

思わず体を小さくする。

そんなこんなで、やっとチャールズの家に着く

「よし行くか!」 

車の止まる音で分かったのか、がノックをする直前にドアが開いた。

「おはようございます、今日はすごく機嫌がいいですね…」

眠たい目をしょぼつかせながらそう言うと、

チャールズを助手席に座らせ自分の父が働いている巻に向かった。

数十分経過しただろうかやっと着く、

「ここは、何にも変わってないな!」

ガハハ笑い周りを見渡す

チャールズが来たのは、サムを弟子入りさせる時以来であり

ざっと5年くらい経過しただろうか

チャールズ「そうれすn…」

大きなあくびをしつつ気だるそうにチャールズ後を着いてゆく

「おーい!サムひさしぶりだなぁ~!」

声の方向は、こちらへゆっくり向かってくる船の方からだった

辺りは、霧がかっていてハッキリと見えないが大きく手を振る人影が一つ

その周りに大勢の人影が見える

「お前の親父さんじゃないのか?」

聞き覚えのある声にチャールズはサムに言う

「おそらく…」

船は、止まり十数人の男たちがわらわらと船から降りてきた

その中から一際がたいのいい男がこちらへ向かってくる

「お!久しぶりですね!うちの息子がお世話になっています!」 

チャールズにぺこりと頭を下げハハハと笑う

大男の正体は、サムの父だった

「おやじさんも元気そうでなによりだよ」

ニコリと笑う

サムも「久しぶり」と眠たいのを我慢しニコリと笑った。

「しかしこんな早朝からどうしてここに?何か用ですか?」

不思議そうな顔でチャールズに聞く

「実は、エゾメバルという魚を探していて

もしとってたりしたら一匹譲ってほしいと思って、

ここに来たんだ」

そう言うとサムの父は、ガハハと大声で笑い

「エゾメバルは、日本の北海道にしかいない魚ですよ!こっちじゃ捕れません」

と腹を抱えつつ言い呼吸を整えてからまた口を開く

「まぁしかしなんです?こんな朝早くから来るということは、

かなり大事な理由があるんでしょう」

チャールズが頷くと「代わりになるかわかりませんが

好きな魚を探して一匹だけならもってって良いですよ」と言い自分の船に導いた。

二人もその後ろについてゆく

「箱は、全て調べていいので気が済むまでご自由に!」

それだけ言い残し、仲間のもとに戻って行った。

船に残された二人は呆然と立ち尽くす、

チャールズに至っては、さっきの元気な表情が消え青ざめていた

「いやぁ残念したねぇ」

アハハと笑いながら言うと、

チャールズは、焦った様子箱をひっくり返しあさり始めた

「どうしたんですか?そんな焦った顔をして」

チャールズを眺めつつのんきに言う

「お前も強そうなやつを見つけろ!」

サムの方を向かずに言う

「いやしかしそんなことしてるよりも、朝のトレーニングが」

「お前がかかってるんだ…」

ボソッと呟いたその一言にサムは、一気に真面目な表情になる

「何かあったんですか?」

真剣に聞くサムに、チャールズは手を休め言う

「昨日酔っぱらった勢いでジャッカスにこう電話しちまったんだ…」

(ジャッカス)という名前を聞いた瞬間、サムは不安な表情になる

「3週間後勝負を挑みたいこっちが負けたらサムをやろう

だがそっちが負けたらそのジムと俺の一番弟子ワシントンを渡してもらう…っと」

サムは、一気に青ざめ残りの魚の入った箱をあさり始めた。

数時間たった時である突然「わっ!マジかこいつ!」とサムがしりもちをつく

「なんか見つけたか!」

サムの方を見る

「いやなまこを間違えて握ったせいでネバネバした液体をかけられたんですよ」

ハンカチで顔を拭きつつ言うとチャールズは、黙り込みなぜか考え込み始めた。

「どうしたんですか?早く見つけますよ!」

そう言ってもチャールズは、動かない

10分経ち何を思ったのかチャールズは、「なまこを持っていくぞ!」と

サムに向かって叫んだ

大声で叫ばれたサムは、思わず「はい!」っと返事し

さっきのナマコを優しく掴み落ちていたビニール袋に水と一緒に入れる

チャールズは、ナマコの様子を見ると「よし!」というなり走り出した。

サムもお礼の言葉を言う暇もなく追いかける、

車の前まで来るとチャールズは、サムの手から車のキーをひったくり

運転席に座るサムも急いで助手席に座った。

「今から親父の研究室に行くぞ」 

運転しつつサムに話す。

サムは、「分かりました」とだけ言い黙った、余計に聞くと怒られるからだ

研究所までは、3時間ほどかかりやっとついた

二人は、車から降りると伸びをし背中をポキポキと鳴らす

「なんか変わってねぇな」

研究所は、もともと使わなくなった工場を買い取り室内を変えただけのため

見た目は、白い長方形の豆腐のような工場だ

隣に二階建ての家が建っていた。

初めて来るサムは、「本当に研究所なんですか?」と言うと

スマートフォンで場所を確認し始める。

「ここであってる行くぞ」

そういうなり勝手に工場の方へ歩き始めた。

ドアはガラスの自動ドアになっており入ると、

そこにはスーツ姿のロボットが受付カウンターにたっていた。

「ようこそガルドラボへ今日は、どのようなご用件で?」

数年前からロボットの開発競争が激しくなり、

今では、人間のように滑らかに話せるようになったようだ

チャールズ「よう!チビすけピーター・ジョンソンは、いるっか?」

「お久しぶりですチャールズ様!現在第五研究室にいます」

そういうとパットを取り出し地図を表示させた

チャールズは、指で地図をなぞりながら確認すると

「おう!ありがとよ」と言いすたすた研究室へ向い始める、

研究所内は非常に広く迷路のようになっていて、

結果ドアに着くころにはチャールズは若干息切れをしていた。

「じゃあ行くか」

数分休んでからスイッチを押しドアが開くと

来るのを知っていたのか目の前に

白衣を身にまとい丸メガネをつけた父が立っていた

「ようこそ我がラボへ」

ニコリと笑いチラリとサムの方を見る

「こっちは…彼氏?」

眉間にしわを寄せ言う

「なんでだよ今面倒見てるボクサーだよ」

ピーターが「ふーん」とつまらなそうな顔をしメガネを掛けなおす

「そんなことよりオヤジ頼みごとがあるんだがコイツを擬人化してくれ」

サムに見せろというジェスチャーをし、今朝貰ったナマコを見せた。

「ほお~ニュースを見ているなんて感心したぞ」

「かわいいな」とナマコを突きながら言う

「で?できるのか?」

ピーターは、突っついて濡れた指を白衣でふき取り

改めてチャールズの方を見ると「分からん」と言う、しかし続けて

「だが…海の生き物を人間にするのは面白いかもしれんな」と付け加えた。

チャールズは、それを聞き「じゃあやってくれるんだな!」と笑った

「だが条件がある」

サムの方を指さし「そこの青年にちょっとてつだってもらおう」と言い

「では、行こう」とサムの太い腕を両手でつかんで、

そのまま部屋に入れるとドアを閉めた。

「おい!クソじじい!俺も入れさせろよ!」

ドアを叩いて叫ぶと別の研究員が出てきて、

「あなたは、ロビーの方でお待ちください」と言うと

チャールズをロビーへ案内した。

「なんでチャールズさんは、はいっちゃだめなんですか?」

おおよそ予想は、ついているが一応ピーターに聞いてみた

「あいつは、昔研究員ともめた時に僕の機械を殴って数台壊したんだ」

そう言い白衣のようなゴム製の服・手袋・フルフェイスのヘルメットを、

サムに渡し着替えさせた。  

その間に何やら170㎝の大人4人分の高さは、あろう

高さの鉄製の円柱型機械動かし始めドアを開いた。

サムが着替え終わっているのを確認すると、

「そのナマコをこの機会の中に入れてくれ、僕は手が汚れるのが嫌いなんだ」

と言う、それに対し「研究者がそんなこと言っていいんですか」と気持ち悪そうな表情をしつつ袋から取り出すと機械の中に放り込むんだ。

「オーケーです!」と言うとピーターは、頷きドアを閉める

「床の赤いラインまで下がっといてくれ」

床には、赤色のテープのほかに黄色と青のテープが床に張り付けてあった

言われる通り下がるとピーターは、機械についてるレバーを下に降ろし、

急いでサムの隣に逃げるように行く。

機械は、「ブーン」という唸り声を数分あげ3分たった後

突然バリバリバリと言う大きな音と同時に、

サムの皮膚に静電気のような電気が体中に走った。

「痛!」

「ゴム製のもので体を覆わないと感電死するんだでもこの程よい痛さたまらないだろ?」

目には、見えないがかなり強い放電をしているらしい。

10分経っただろうか肌の痺れは消える、

気が付かなかったが室内から研究員は出て行ったらしくぞろぞろと入ってきた。

「じゃあ開けてみるか」

ボタンを押しドアを開くとぶよぶよに肥りまるで肉でできた雪だるま…

いや肉ダルマが体中に煙をまとい出てきた。

その姿にサムは言葉を失う、

「男性のようだな…しかし擬人化したら理想の体型で出て来るはずなのだが…失敗か?」

擬人化したナマコの手を取り歩かせる、サムはその光景に思わず頬を抓った。

この後チャールズも呼び人間になったナマコと対面させ、

ピーターに何故今回頼んだか理由を話すと「面白そうだ!」と

好物などいろいろ教えてもらいその日は、終わった。

チャールズは、「このデブを一流のボクサーにさせる!」と言っていたが、

サムは、呆れて言葉も出なかった。

後部席に座っているナマコは、チャールズの言葉に返事するかのように、

「ギエエエエエエエエ!」と叫ぶ。

チャールズの家までは、3時間半で着く

「ほ~れ!肉ダルマさんおうちに着きましたよ~」

「ホントご機嫌ですね」

チャールズは、後部座席のドアを開けると「なんじゃこりゃああああああ!」

と叫ぶ突然の叫び声にサムは後ろから覗き込むと、

そこには、数時間前とは全くと言っていいほど変わり果てたナマコの姿があった。

体は、骨が見えるほどガリガリになり皮膚は、岩のように固くなっていた。

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