銀河鉄道の九月

先輩、私、先輩のことが好きでした。

夜がオレンジ色の光で夕方みたいな顔をしているのが薄気味悪い。先輩が描いた文字と紡ぐ色の全部はきらきらしていて、お祭りに並ぶわたがしに似ている。懐古と回帰がよく似てるのは偶然なんかじゃないと思い続けた春の夜、思い出補正を飲み込んで生きてきた、後輩のわたし。先輩、私。私は。

寂しいも悲しいもどこかに行った。虚しいも獏が食べてしまって、愛しいはあなたに押し付けて、きっともう二度と帰ってこない。すれ違いざまの電車は銀河の色とましろな中身を抱えて、ふわり、搔き消える。先輩、私はあなたの誕生日を知りませんでした。先輩、私は、あなたの生き方を知らなかった。

そうして生きて生きて死んで、走馬灯の光照らす0.1ミリに先輩の姿を見るんだろう。敬愛まみれの薄汚い感情が尊いものに昇華されてしまう前に、わたしはあなたを忘れるべきだった。馬鹿みたいだね。先輩、私はどうしたって、あなたのことが好きでした。

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