【見えないからこそ、強きチカラ】 第十四部

「そう。しらみつぶしに外出しているアンドロイドをマークしていたんだ」



 アンドロイドは基本的に対象者とマンツーマンで存在する。しかし、それは基本的な話。年、年月、信頼関係など、様々な要因が揃えば、その限りではない。つまるところ、ユメのように買い物などの場合は単独行動になる。犯人たちもその瞬間を狙っていたのだろう。ならば、一人でいるアンドロイドを監視していればいずれ犯人たちは犯行に及ぶ。


 しかし、確かにそうだが、そうだとしてもそれはあまりにも非効率的だ。なぜなら、この街だって大きな街ではないとはいえ数万人の人間がいる。そして、子供数=アンドロイドの数なのだ。それだけのアンドロイドの数がいる中で、外に一人でいるアンドロイドを監視するとしても、やはりその数は百や二百なんて数ではないだろう。


 さらに、その監視しているアンドロイドがいつ被害会うかわからない。街を歩いている時。信号を待っている時。はたまた家を出た瞬間かもしれない。それを、しらみつぶしに調べたと道端先生は言った。



「先生って科学者ですよね……」


「そうだ。だが、現実主義なんだ」


「なら、もっとも遠い発想だと思うんですけど?」


「私は現実主義でも数字で物事を図らない。重要なのは確実性と考えている」



 本当にこの人を頼ってよかった。この人を信頼してよかった。俺は心の底からそう思った。そして、同時に先生に感謝した。



「それで、話を戻すが、犯人たちのありかはわかっている。そして、今夜そこへ乗り込もうと思っている」


「そうですか」


「そこにユメちゃんがいるかは現場に行くまでわからない。だから、それについての連絡は早くても今夜になるだろう」


「はい」


「今回のこの件については私たちだけでは身にあまる。だから、現場の確保については警察に一任してある。それはかまわないね?」


「はい」


「叶汰君。いま何時かわかるか?」


「はい」


「叶汰君、一つだけ言わせてほしい」


「はい」


「絶対に君は関わるんじゃないぞ」


「…………」


「一番返事が聞きたかった質問なんだがな……」



 それは無理な話だった。だって、今まさにどうやってユメを救おうか。犯人たちを襲おうか考えてしまっていたのだから。



「君が今何を考えているのかわからない。どうやってユメちゃんを救おうか。はたまた、犯人たちをどう料理しようか」



 わからないと言いながら、ズバリとこちらの思惑を当てているのだから、やっぱりこの人はすごい人だ。それとも、俺の考えがあまりに安直になっているのかもしれない。



「どちらにせよ。君は明日受験なのだろう?」


「知ってたんですか」


「当たり前だろ。君と何年の付き合いだと思っているんだ」


「そうですね」



 そうだ。ユメと十数年生きてきたように、そのユメを支えてくれた先生とも関わってきたのだ。


 “知り合い”なんて言葉で止まるような関係ではない。それこそ、家族。とても出来のいい兄。そんな風に俺は勝手に先生のことを思っている。



「君はおとなしく今すぐ寝るんだ」


「何言ってるんですか先生。もう朝ですよ」


「どうせ寝てないんだろ。じゃなきゃ、こんな早朝にワンコールで電話に出るやつはいない」



 もう俺の行動なんてバレバレだった。やっぱり先生には敵わなかった。



「分かりました。あとのことは先生に全て任せます」



 先生は一つため息をついて、力強く答える。



「任しておけ」



 俺はその先生の言葉を聞いて携帯の通話を切る。そして、携帯を充電器に刺し、先生に言われた通り、ベッドに倒れこむようにして横になり、眠りについた。



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