第七章 風の谷と大地の魔女
第19話 大地の魔女(1)
「ええ、古くからの知り合いなのよ」
ひらひら手を振って応じる
「名前を呼ばれたら来ちゃうわよね」
上級魔性には珍しく、彼女は
「尻尾だ!」
目を輝かせるルリアージェの適応力の高さに、ジルが頭を抱える。大災厄たるジルを連れ歩くならば、人ならざる者に恐怖心ばかり持っても益はない。だから好奇心が旺盛なのも、初めて見る現象や人外に興味をもつのも良いことなのだろう。
分かっていても、知らない相手に警戒心が働かないのは問題だった。今後の苦労を思うと頭を抱えるしかないが……それでも離れる気はない。
「はいはい、後でな」
主たちのやり取りを横目に見ながら、リオネルは気になる事実を確認にかかった。
「お久しぶりです、ライラ。ところで、私達のところへ来てしまってよろしいのですか?」
「あら、どういう意味で?」
質問を返す彼女に、複雑な裏はなさそうだ。しかし、レンに水や風の魔王に傅く魔性を焚きつけられた身としては、彼女が現れたタイミングの良さに疑いを持ってしまう。
1000年前の騒動前に名を馳せていた大地の申し子を相手に、リオネルは立ち位置を僅かに移動させる。さりげなくルリアージェを後ろに庇うジルとライラの間に入ったのだ。その用心深さに少女は声を立てて笑った。
「貴方ほどの実力者に、ここまで警戒されるなんて…あたくしも過大評価されたわね」
「前回は侮って失敗しましたから」
リオネルはしれっと切り替えし、右手に炎を呼び出す。臨戦態勢に入った男に肩を竦め、ライラは大げさに手を振って嘆き始めた。
「ずっと退屈していたのだもの。少しくらい羽目を外したからって、邪険にしないで欲しいわ。考えてもみて――あたくしが魔王達に協力したのは、楽しそうな戦いに混ぜて欲しかったからよ? なのに終わってみれば、魔王は3人とも閉じこもってしまうし、貴方がたは封印されてしまった。誰もあたくしと遊んでくれる方がいなくなったの。どれだけ時間を持て余したことか。いっそ、あたくしも封印してもらえば良かったわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます