第9話 『70年分の夏を君に捧ぐ』 櫻井千姫
この本は、2015年を生きる女子高生が1945年を生きる少女と一日置きに入れ替わってしまうというお話です。
1945年。終戦の年、ですね。そして、広島と長崎に原爆が落ちた年でもあります。
主人公の百合香が入れ替わる女の子・千寿は、そんな年の広島に家族と共に暮らしています。彼女たちの入れ替わりが始まったのは7月。百合香は70年前の日本を、千寿は70年後の日本を、一日置きに体験していきます。そして、運命の日が...8月6日が近づいてくるのです。
これ以上書いてしまうとネタバレになってしまうのでもちろん書きませんが、読みながら、二人はどんな選択をするのだろう、歴史を変えてしまうのだろうか、運命を受け入れるのだろうか、私だったらどうするのだろうかと、いろいろ考えさせられました。
また、現代と戦時中の日本が交互に描かれているため、現代がどれほど平和なのか、戦時下の日本がどれほど過酷だったのかを突きつけられます。けれどそんな過酷な戦時下でも、人々はかけがえのない家族や友達、恋人と大切な思い出を育み、決して暗いだけの時代ではなかったということも伝わってきました。
とても心を揺さぶられる作品でした。
私は普段、戦争を、特に第二次世界大戦期の世界を題材にした小説や映画を読んだり見たりすることはほとんどありません。蛍の墓でちょっとトラウマになってしまって、避けていた部分もあります。
しかし、この小説はなんだか心惹かれるものがあって購入しました。
文体もそんなに重たいものではなかったので、すらすらと読むことができました。小学校高学年や中学生にもオススメできるような作品です。
それでも戦争の悲惨さは痛いほど胸に突き刺さってきました。戦争は決して起こしてはならない。そんな強いメッセージが、文章の一文一文から伝わってくるような、力強い物語でした。
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