時計の針は止まらない
カゲトモ
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手洗いから出てすぐ、ちょっとした違和感。誰かから見られている気が、する・・・?
すぐさま先ほど上げたチャックのことを頭に思い浮かべる。大丈夫、絶対にちゃんと上げた・・・はず。え? まじで?
けれどここで堂々とズボンのチャックを確認するわけには、さすがに・・・開いていても開いていなくても恥ずかしいし! 三十路って言ってもそれはまだ恥ずかしいお年頃なの!
なんて思いつつも本当に開いていたら恥ずかしすぎるから・・・今日何のパンツ穿いてたっけ・・・?
「あ」
そこで違和感と目があった。良かった、まだ顔を下に向けただけだし「何してるの」
「な、何にもしてねぇよ」
ちょっと真下向いただけだし。
「チャック、開いてないよ」
・・・そりゃどーも。
ショッピングモールのベンチに呆れ顔で腰かけているのは見慣れた顔だった。
ってかなんでこんな時間にいるわけ?
「学校はどうしたんだよ。いつの間に不良になったんだ」
これじぁマスターが悲しむだろうが。
そう言うと孝宏はさらに呆れたような顔をして左右に頭を振った。
「何言ってんの、時間もちゃんと管理できないの?」
ぺしぺし、と自分の腕時計を叩いて孝宏は言う。
「もう学校終ってる時間だけど」
「え」
そう言われてからスマホの画面で時間をチェックする。いつの間にこんな時間になっていたんだ。
「朝からずっとここにいたから時間が分からなくなってたわ」
「そんな長い時間何してたの」
「映画観てた」
「朝からずっと?」
「そ」
朝一の映画から視て、さっき三本目の映画が終わったところだ。
「ふぅん」
「ん?」
また呆れたような顔をされるかと思ったけれど、意外にも孝宏は素っ気なく言った。あれ、興味がないだけかな?
「孝宏は何してんの? 暇してるなら飯でも行くか?」
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