本篇7、あなたを探して遠い道

増田朋美

第一章 駅での出来事

あなたを探して遠い道

第一章 駅での出来事

もう、人生終わりにしようと決断して、何年たったか覚えていない。というか、それを考えたのは何年前の話だろうか。ただ、実行できないで毎日を過ごしている。

とりあえず、その日のご飯を食べるため、スーパーマーケットで働いて生活しているが、もう、いいやと思うくらい、仕事には身に入らなかった。ただ、お客さんたちとお金のやり取りをして、それ以外に話すことは何もなく、それで十分なのである。

今日も、勤務時間を終了して、次の人に引き継いでしまえば、あとはすることもないので、まっすぐ一人暮らしのアパートに帰る。

とにかく家賃の安さで決めてしまったので、間取りはワンルームしかないけれど、それでいいと思っている。ただ、食べる場所と寝る場所さえあれば、それでいい。

冷蔵庫に入っていた、パンを出して、とりあえず食べる。冷蔵庫の中はパンと飲み物ばかり。料理なんて、もう自分だけなのだから、作る必要もない。いつも一番近いコンビニで一瞬で買って終わり。

食べ終わったら、お約束の通り、病院でもらってきた薬をがぶ飲みし、あとはフリマアプリでもらった、小さなテレビをひたすら見る。テレビは大体ばかばかしい番組ばかりやっているので、彼女くらいの年齢では、毛嫌いする人が多いのであるが、これが結構役に立った。その時だけは、すべての過去を忘れ去ることができるからだ。

でも、今日テレビをつけたら、なぜか深刻な番組を放送していた。なんだか、若い人が自殺してしまうことが相次いでいて、その理由を再現したテレビドラマだった。連続ドラマということでもなく、まだ始まったばかりだったようなので、しばらくそれを見させてもらおう。

内容は、学校でのいじめを扱ったものである。確かにこれが原因で自殺をしてしまう人は非常に多いことは知っている。このドラマでも、話題の俳優や女優が生徒に扮してそれを再現しているが、彼女から見て、言える感想はただ一つ。

「甘いな。」

本当に底が浅い。やっぱりテレビはテレビである。NHKなんて、政府の監視が厳しいから、ドラマの中に、現実の要素を盛り込んだら、やっぱりお咎めが来てしまうんだろう。だから、こういう甘っちょろいドラマしか作れないのだ。民放であればもうちょっとリアルに描いてくれるかなと思うけど、逆に俳優の美しさに重点を当ててしまって、本当に言いたいこととはずれてしまうことが多い。まあ、結局どこのチャンネルでも、学校でのいじめなんて、再現することは絶対にできないと思う。小説だって同じことが言える。最近の小説にもいじめを扱ったものは数多くあるが、大体筆者が体験したものなどを書いたりすると、編集者に邪魔されて、本当に書いてほしいところが削られてしまい、つまらない小説になってしまうことが多くある。だから、テレビも小説も、大体ワンパターンで終わってしまう。きっと、私が体験したような、最悪のパターンでなければ解決しなかったという事はほとんど描かれることはない。本当は、そうならなければ解決なんかしないのに。表現の自由というものはあるらしいけど、証言の自由というものはまるでないなと、彼女は考えていた。

テレビでは、クラス会が行われている場面を映していた。主人公の美少女がなぜいじめられたかを考える場面であるが、果たして、こういう場面は現実問題、設けてくれただろうかというと、絶対にないと断言できる。むしろ、気にしないで受験勉強に励めという教師が大半であると、彼女は知っているから、本当にこの場面はばかばかしく思えた。

被害者である私から見れば、こうしていじめがテレビで放送されてくれることは、うれしいことでもあるけれど、テレビが現実を見てくれないことには幻滅する。多分このドラマでも、クラス会をして、生徒同士が和解するという形に持っていきたいんだろうけど、そんなに簡単に解決することはない。見ていると、本当に嫌になってきて、もうイライラして、電源を切ってしまった。

テレビの隣には、なぜかおかしなことに、小さな仏壇が設置されていた。なんともミスマッチではあるけれど、これだけは娘のために設置しておいてやりたかった。と言っても、遺影もなにもなく、あるのはお供え物と、線香とろうそくだけである。戒名もお願いしていない。まだ、20歳にもなってないのに、そんな大往生したお年寄りに付けるような戒名は、どうも嫌な気がして、あえてつけなかったのだ。遺骨は、とりあえず夫の菩提寺に入れてもらってあるが、その一部はある業者に加工してもらい、ペンダントとして彼女は肌身離さずつけている。

「あっちゃん。もう、ママもそっちへ行ってもいいかな?」

思わず口に出して出てしまう彼女。めげそうになると、必ずでてくるこの言葉。本来であれば、直後に大きな雷が落ちたり、大雨が降ってくる。偶然か必然かそれは知らないけど、これを口にすると、必ずそうなるので、娘がママはまだ駄目!と言っているのだと勝手に解釈して、もう一回生きなおそうと考えなおす習慣があった。でも、今日は雷も大雨も何もなかった。

ただ、穏やかに晴れているだけの事である。

そういうことか。じゃあ、朝子は許可してくれたのかな。ママが、そっちへ行く事に。

ふっとそう思った。

そうなったら決行だと彼女は確信した。善は急げではないけれど、早く決行したほうがいい。ぐずぐずしていたら、更に何かトラブルが起こって、決行どころではなくなってしまう。

練炭を買いに行こうかとか考えたが、売っているホームセンターが遠方なので、買いに行くのは面倒くさく、近隣に大きな高層ビルもないし、ぶら下がってもいいような大木もないし、飛び込める海も川もないので、手っ取り早く駅へ行ってしまうことにした。

最寄りの駅は富士駅だ。電車はあまり利用しないけど、特急列車とか通過する列車もあるだろう。静岡駅のような大型の駅でもないし、特急が停車するとは思えない。よし、そうしよう。あっちゃん、ありがとうね。やっとママがそっちへ行く事を認めてくれたのね。ありがとう、ママもこれでやっと楽になれるよ。遺書とかそういうものは別にいい。だって読んでくれる人はいないんだし。喜んで彼女は駅へ向かって歩いて行った。

とりあえず、歩いて富士駅に行き、そのままではホームに入れないので、切符売り場で入場券を買い求める。まあ、別にどこの路線でも構わない。どうせいなくなるんだから。というわけで適当に階段を降りて、適当にホームに出る。そして、ホームの最先端に向かって歩く。電車が登場して、この位置から飛び込めば、まだ電車のスピードも速いから、よりいける可能性は高い。

数分後。後方にあった車いすエレベーターが開いて、誰かが降りてきたことがわかる。多分きっと、サラリーマンか、観光客とかそういう人だろう。まあ、他人の事なんて気にしなくていいやと思う。

「おーいおばさん。」

不意に誰かがそう言ったが、おばさんなんてたくさんいるし、自分の事ではないと思う。

「そんなところにいたって、電車は来ないよ。もうちょっと、こっちで待ってろや。」

自分に言っているわけではないからと思って、無視し続けた。

「おかしなおばさんだな。こんだけでかい声で呼んでも返事がないとは、もしかしたら、耳が遠いとかそういう事かもしれない。ちょっと、駅長に言って来よう。」

ああ、聾の人に言っていたのか。そうなると、私は、そういう障害を持っているわけではないから、違うな。と、思いながらまた電車が来るのを待っていた。

しかし、驚くほど電車の数が少なかった。どこの駅でも一時間に四本、少なくとも三本はあるだろうと思っていたら、いつまでも待たされる。もう、何分待ったら電車が来るんだとじれったくなってしまう。

「あ、まだあそこにいるぞ。ほら、あの人だよ。ああして、電車が来るのを待っている。あの位置では電車なんか来ないだろ。」

不意に、そんな事をいっている声が聞こえてきた。

「はい、乗車位置は、黄色い数字の三番から四番までですね。」

ちょっと高齢の男性の声も聞こえてきた。

「だろ、駅長さん。僕は字が読めないから、何番なんて言えないけどさ、少なくとも、あの先端には、電車は来ないから、こっちへ来いと言ったのに。それなのに、耳が聞こえないみたいで、無視したままなんだ。僕が手話の知識があれば、もうちょっと正確に伝えられるんだけどさ、残念なことにそれがないので呼び出したんだよ。頼むぜ、駅長さん。」

え、何?自分の事だったの?と驚いていると、いきなり背中を叩かれて、

「すみません、お客様。」

ゆっくりした口調で駅長さんが自分に話しかけてきたではないか。

「え?」

思わず声を出してしまう。

「なんだ、耳が遠いわけではなかったの?」

後を振り向くと、一人の車いすの男性と、制服を着た駅長さんが彼女を心配そうな顔をしてみているのだった。

「それじゃあ、なんで僕が呼んだ時にはお返事してくれなかったのさ。」

「お客様、次の電車の乗車位置は、黄色い数字の三番から四番までなので、そちらまで行ってもらえないでしょうか?」

「はれ?駅長さん、次の電車は富士駅どまりじゃなかったの?」

「いえいえ、次は特急ですから、折り返しで甲府行きになります。社内清掃がありますので、五分ほどお待ちいただけますかな?」

「あそうか。次は特急富士川号だったのね。」

「え、待って。富士駅の次の駅があるのでは?」

と、彼女が言うと、

「ないよ。ここ身延線だもん。身延線って富士駅が終点でしょ。」

そんなことも知らないのか?という顔で、車いすの人が言った。

「あ、そ、そうでしたね。ごめんなさい。私、男でないのに、電車がすきで、特急電車ってなかなか見たことがないから、面白くなって、思わず先端の方へ行ってしまったんです。勿論、写真が撮れたら、すぐに指定された乗車位置に行きますから、大丈夫ですよ。」

そう言って、彼女は携帯電話を取り出した。支払う余裕もなかったから、携帯電話で十分なのだ。

「変なの。スマートフォンなら凝ったアプリがあって、いろいろ面白い写真を撮ることはできるが、なんで携帯電話なんだろう。それに、こんな田舎電車を撮りたがる人なんて誰も見たことないけど?」

「まあ、最近は意外に秘境駅ブームなどもあって、結構田舎電車と言われている鉄道路線でも、写真を撮りに来る人は多いですよ。まあ、そういう事でしたら、次の電車はあと15分ほど後になりますので、今しばらくお待ちくださいね。」

「悪いねえ、駅長さん。急に呼び出しちゃって。でも、おかげさまで、何をしたいかわかったから、心配しないでよかったよ。じゃあ、電車が来るまでもうちょっと待たせてもらうからね。」

「いやいや、心配してくれてどうもありがとう。こっちも、最近、駅の中で変な事件が起きることが多いから、すぐに見つけてくれて助かった。じゃあ、業務に戻っていいかな?」

「はいよ。やることが分かったから、もういいや。」

「よかった、じゃあ、電車が来るまで、今しばらく。」

駅長さんは、軽く敬礼して、再び駅事務室に戻っていった。

しかし、この人、なんていう事をしてくれたんだろう。声をかけるだけではなく、駅長まで呼び出して。駅長に顔を覚えられたら、またこの人が来たと目をつけられるかもしれない。

「なあ、おばさん。」

また声をかけてきた。

「なんですか?」

「おばさん、観光客じゃないだろ。僕、電車ばっかり乗っているから、確かに電車の写真撮りたがる人をよく見てるけどさ、まず、そんな古ぼけた携帯電話で写真撮る人なんかどこにもいないよ。撮るんだったらライカみたいな超高級なカメラを持ってくるよ。それに、身延線は確かに山岳路線ではあるが、秘境駅と言える駅は、沼久保とか一ノ瀬とかそういうところに行かないとないでしょ。そんな恰好で秘境駅に行くと言えるかなあ。」

確かに、彼女が着ていたものは、Tシャツと長いスカートで、山奥にある秘境駅を訪問するのにはふさわしくはなさそうだった。

「そんなこと言うなら、あなたもどこへ行くんですか?車いすで、しかも着物なんか着て。」

と、彼女も言い返したが、

「あ、僕はお迎え。丁度親友が、善光寺まで行ったんだけど、次の電車で帰ってくるんだ。」

と、彼はさらりと答えた。

「善光寺って、あの善光寺?」

「そうだよ。武田信玄のね。あそこへ行くにはあの駅で降りるのが一番近いんだ。一生に一度は行きたくなる善光寺。」

善光寺というといろんなところにあるが、彼が言ったのは甲斐善光寺の事である。でも、そんな知識、彼女は持っていない。

「まあそうなのね。そんなのどうでもいいわ。」

つまり、この人も、電車の乗るのではなく迎えだけの目的だったか。あーあ、本当に邪魔が入ったと思わざるを得ない。これなら、雷が落ちてくれたほうがずっとまし。雷が止めばまた決行できるのに、こんな風に、しかも駅長さんまで巻き込んで邪魔をされたら、しばらくこの駅には来れない。あっちゃん、今日は変なやり方でママに意地悪をしたのね。やっぱりまだ、あなたは、ママがそっちへ行く事を許してはくれないんだ。

「理由は、あえて聞かないけどさ、どんなに、生きてるのがつらいとしても、それを放棄するのは絶対にいけないよ。やっぱり、生きるってのは、うまれたからには生きてやるくらいの気持ちで行かなくちゃ。時に、本当にダメじゃないかって思うこともあるかもしれないけどさ、そういう時って、実は大きな一歩がやってくる前触れなんじゃないかと思うようにしているよ。」

不意にその人がそんな事を言う。

「へ、あ、ん?い、いや、どうしてそういう事が?」

「図星か。やっぱり。僕は、文字は読めないが、勘というものは自信があるんだ。絶対そうだと思ったよ。大体僕の勘は当たるようになっているので。」

「じゃなくて、どうしてわかったのよ。」

「なるほど、やっぱり図星だったわけね。また勘が当たったな。今日もついてらあ。理由なんて簡単だよ。顔に出ているよ。そんな深刻な顔で、秘境駅に行ってみようなんて誰が思いつく?」

あーあ、今日は失敗というか、大失敗をしでかしたような気がする。というか、もう最悪の結果になってしまった気がする。これを知られてしまっては、当分の間、実行できないじゃないの。

「まもなく、二番線には、当駅どまりの電車が到着いたします。この電車は、車内清掃が終了後、折り返し特急富士川号、甲府行きになります。ご乗車のお客様は、今しばらくお待ちください。この電車は二両編成になっております。乗車位置は足元の黄色い数字、三番から四番です。」

間延びした声で、先ほどの駅長がアナウンスする。

やっと電車がやってきたのか。本当に田舎電車なんだなあ。一時間に一本とかしか走っていないのかな。

「はい、じゃあ、僕らも電車の止まる位置に行くか。」

「あたしは、帰りますから。」

「ダメダメ。一緒に来なきゃ。電車が来た時に飛び込まれたら、僕も自殺幇助で捕まっちゃうよ。」

今日は、あきらめようと彼女は心に決めた。

仕方なく彼の車いすを押して、指定された乗車位置に向かう。

「ところで君の名前なんて言うの?」

不意に彼がそう聞いてきた。

「何かの縁だし、名前くらい聞いたっていいだろ。」

「ああ、あたしは、渡辺多香子です。漢字も説明すると、」

「どうせ読めないから名前だけで十分だよ。僕の名前は影山杉三というが、どうも苗字で呼ばれるのは嫌いなので、杉ちゃんと呼んでくれ、杉ちゃんと。影山さんとか、杉三さんと呼ばれると気持ち悪い。」

へえ、本当に変わった人だ。しかし、初対面の人に、杉ちゃんなんて慣れ慣れしくいえるかな。

それと同時に、電車がやってきた。もう、ホームの中心部に移動してしまったので、多香子の決行しようとしていたこと、つまり、電車への飛び込み自殺は、大失敗に終わった。

「確か蘭は、後車両の指定席に乗ったと言った。」

そうなると、四番の数字のところで待てばいいという事か。一人で特急に乗って、しかも指定席なんて使うというのだから、その人は相当な金持ちなのか。

「いや、障碍者は、高級な電車に乗ったほうがいいんだよ。」

あ、そういう事か。確かに、安全を考えると、そうかもしれない。ローカル線もよいところはあるが、障害のある人にはちょっと向かない、粗末なところがあるから。

「普段は善光寺駅に止まることはないけど、今日はさわやかウォーキングの開催で臨時停車するんだって。ラッキーだったな。」

そう言っている間に、電車は二人の目の前で停車した。すぐにドアが開いて、車掌が車いす渡坂を設置し、手伝ってもらいながら、蘭が電車を降りてきた。

「おかえり、蘭。」

「あ、悪いねえ。もう、道具屋を探している間に道に迷ってしまったので、こんな遅くなってしまった。今日はさわやかウォーキングの開催日でもあるから、指定席がこんな位置しか取れなくて。」

「なんだ、善光寺さんに行ったんじゃなかったの?」

「うん、そこへ行ったら、写真を撮ってくれって言われてさ。なんか和彫りに興味持っている人みたいで、丁度近くに手彫り用の鑿がある店があるって教えてもらったんだよ。外人さんに。」

そんな事を言いながら、蘭は二人の方を見て、

「杉ちゃん、この女の人、、、。」

と不思議そうに言った。

「あ、紹介するね。この人は、たった今友達になった、渡辺多香子さん。そして、この人が、僕の親友である伊能蘭だ。僕の家の隣で刺青師をやっている。まあ、仲良くしてやってくださいませ。」

「ああ、どうも始めまして。杉ちゃんが変な迷惑をかけてすみませんでした。」

刺青師というと暴力団の関係者かと思わずギョッとしてしまうのであるが、

「この人は、浅草高橋組とかそういう組織とは何も関係はないから大丈夫。」

と、杉三は急いで訂正し、多香子と蘭を無理やり握手させた。蘭の手は無骨な職人の手で、確かに、インクのにおいがした。

それをやっているさっさと車内清掃は過ぎてしまって、電車は折り返し運転で、甲府まで行ってしまった。田舎電車であり、二両しかないので、車内清掃なんてすぐにできてしまうのだ。

「じゃあ、タクシー探して家に帰ろうぜ。カレー作らなきゃ。」

「カレー?こんな遅い時間に今から作るの?」

「そうだよ。多香子さんに食べてもらうんだ。それにカレーだって、ニンジンを小さくするとか、肉を薄っぺらいのにすれば、結構短時間でできるよ。」

「い、いや、いいですよ、カレーなんて、申し訳ない。」

多香子は急いで断ったが、

「ダメダメ、生きることについて悩むやつは、大体腹が減っている。そこを解決することから始めなければいかん。」

と、言われてしまった。事実、パンを食べたのに、なぜかものすごく食欲が出てしまった。

「本当に、悪いようにはしませんから、いらしてください。彼の作るカレーというものは、栄養満点でものすごくおいしいことは確かなので、、、。」

蘭がそういうので、もう行かなきゃいけないなと思った。

「じゃあ、いくぜ。いつまでもホームにいては、駅長に怪しまれる。」

「どうぞいらしてください。」

仕方なく多香子は、この不思議な二人の後についていった。

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