第2話

「いや、紫苑しおんくんかって、そないなこと言うけど、その文豪たちの本を読まへんやんけ……。紫苑しおんくんに言われる筋合いなんかあらへんと思うんやけどな?」


「そ、それは、あんな堅苦しい本なんか読んでも、肩が凝るだけなんで……。できるなら、年頃の女の子らしく、恋愛とかそっち方面に特化してくれたほうが良いわけで……」


 紫苑しおんくんが口を尖らせながら、ぶつぶつと文句を言ってるんやで。ほんま、恋に恋する年頃の女性ってのは、恋愛ものが好きやなあ?


「で? わいに恋のおまじないを聞くのはええとして、本当に試す気かいな? まじないは転じてのろいとなるって言葉は、紫苑しおんくんかって、知っているやろ?」


「それはもちろん知っています。でも、コタくんは皆の人気の的なんです……。私なんかが相手にされない可能性が高いことくらい知っていますよ……」


 紫苑しおんくんが今度は肩を落としているんやで? ほんまに感情が表面にでやすい御人やで。


「わかった、わかったさかい……。わいの知っている、おまじないで良ければ、教えるんやで?」


 わいがそう紫苑しおんくんに告げたと同時に紫苑しおんくんはまるで華が咲いたが如くの笑顔になるんやで……。まったく、世話のやける御人やで……。


「ええか? 溶かしたチョコに、自分の髪の毛の灰を3グラム。そして、左手の薬指の爪の粉末を混ぜるんや」


「んっと、髪の毛の灰を3グラム……。左手の薬指の爪の粉末を少々と……。部長、他に必要なものはあります?」


「えっと、本当ならチョコはベルギー産のチョコがええんやけど、バレンタインデーは三日後やから、取り寄せるのは無理やな。まあ、大正チョコレートでええんちゃうか?」


「そう……ですか。うーーーん、ここは妥協するしかないわ」


 どうせ妥協するなら、渡す相手を妥協してほしいところやけどな? コタくんは、他校からの女性からも告白されるレベルで良い男やさかい。わいも、あれくらいの高伸長で、運動神経抜群やったら、ワンチャンあったんやろうかなあ?

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