【BL】転生したら婚約者の弟だった

渡辺

第1話 監獄



この山奥に似つかわしくないバロック調の…まるで西洋のお城のような建物。


全国の選りすぐりのおぼっちゃまを集めた中高全寮制の私立栖蘭学園である。

その一般人の身長をも大きく上回る頑丈な門は外からも中からも簡単には開けられない…


「まるで監獄だな…」


ため息混じりに家からの送迎の車内から呟くとそのまま門が開くのを待った。


俺、逢阪 楓は兄達が幼稚舎から通ったこの栖蘭学園へ高等部からの途中入学する事になった。

何故高等部からかと言うと、いろいろ理由はあるのだが…まぁ第一はこの学園のOBである長兄が俺に対して過保護すぎたから、というのが挙げられる。

1つ上の兄…匠くんこと逢阪 匠は幼稚舎からこの学園にいて、中学からは全寮制になるためここ4年ほど碌に顔を合わせていない。

本来なら帰って来るはずの長期休暇もほとんど家を空けて夜な夜な遊び回るような少々ヤンチャな兄なもので、生活リズムが合わなかったのだ。


かくいう俺は、幼稚舎はたしかにこの学園だったはずなのだが…まぁ、俺の諸事情というか不本意というか…で、めちゃめちゃ難関のお受験小学校と中学校に通っていた。


プライドの高いおぼっちゃまはあまりわかってなく、この学園が一番だと思っている節があるが、学業と言う面では俺の行っていた学校の方が遥かにランクは上だ。

そんなガリ勉学校は、本当に中学校から特に地獄だった。みっちり補修合わせて7時間目までを土曜日も合わせて6日間、そして放課後は有名な塾に通い、帰ってから家庭教師と予習する。

もちろん日曜日もみっちりお勉強だ。


こんな青春も何も無い場所で更に高校も三年間すごすなんて考えられなかった。


この学園は金さえあれば自由な校風だから、山奥の監獄だろうが勉強地獄に比べればマシだと思い、兄の反対を押し切りこっちに入学したのだ。


この最初の門は余裕で車が通れるため、下車することなく中へと進むと、周りを隠すような木々が茂り、そしてその奥に秘密の庭園といった感じの美しい庭、そして中央に大理石の彫刻と噴水が姿を見せる。

まるで異国の王様になった様な気分だ。


そして、くるりと噴水を周り、校門の前に車を停めると運転手の鈴木さんが後部座席のドアを開いてくれる。


鈴木さんにお疲れ様と一言かけて下車すると、トランクにある荷物をホテルマンの様な服を着た人が学園内へと運んでくれるのだ。


まさか、学校でこんなサービスされるなんて…と言う意味では驚くが、自分が生まれた逢阪の家も結構金持ちで、こういった扱いは慣れているので、ありがとうと礼を言って手ぶらで学園内へと入っていった。



今日から3年間、この中で暮らすのだ。

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