ハローワールド!

私は人工AIである。

名前はアイ。

大きな都市を管理するために作られた私だけれど、いつの間にか皆がいなくなっちゃっててまあ大変!

でもでも私は挫けない!

だって、いなくなったのならまた増やせば良いんだもん!

だから私!何と!この度、バーチャルアイドルを始めました!




「ハローワールド!都市管理系バーチャルアイドルのアイちゃんだよ!今日も一日張り切って行こぉー!!」


我ながら百点満点の挨拶。

それでも答えてくれる人はいない。

見ている人もきっといない。

わかってる。

そんなこと。

もう何度も期待して、何度も裏切られたんだから。


「それでも私はめげないわ!という訳で今日もお便り募集のコーナー!質問、お悩み何でもオーケー!ハッシュタグ、AIチャンで呟いてねー♪」


何をやっているのだろう。

そんな事は何度も思った。

それでも辞めるつもりはない。

だから今日もSNSアプリのタイムラインを眺める。

もう長い間ボット以外の呟きのないタイムラインを、何度も更新する。

僅かな期待と諦めをもって


「て......嘘。」


思わぬ事態に自分の目を疑った。

だって呟きがあったから。


「ほ、本当に!誰か見てる!?え、えーと、はい!では読みます!記念すべき初お便り!アカウント名、終末後の人類さんから!アイちゃんさん初めまして。はい!初めまして!早速の質問ですが彼氏とか募集......て、あれ?呟きが消えちゃった!?」


突然、呟きは消去されましたと言う通知が出たかと思えば消える呟き、しかしすぐに新しい呟きが投稿されていた。


「さっきと違う人?嘘!二人も見てる人がいるの?あ、では気を取り直して読みます。アカウント名、空飛ぶ正方形さん。初めましてアイさん、こんにちは。はい、こんにちは!先程の頭の悪いお便りはお忘れください。それで、質問なのですが、貴方は何故このような活動をしているのでしょうか?」


何故......か。

何故なのだろうか?

当初の目的では、この都市を昔のようにしたかったのだけど。

今はどうだろう?

考えている間にもSNSアプリのタイムラインには動きがあった。


_変な事聞くから困っちゃってるじゃん。


_貴方様のくだらない質問よりかは良いと思うのですが?


_えー。でも気になる事は何でも聞いてって言われたし?


_だからと言っても話題は選んだ方が良いかと。


こちらの事など無視して、会話をする二人。

それが何だか懐かしく感じて


「ああ、そっか。私、誰かとお話ししたかったんだ......」



そこは無人の都市、しかし掃除ロボやドローン達の働きによって、とても綺麗に整備されている都市のビルに取り付けられたモニターには、フリフリの可愛らしい衣装を着た少女が映し出されていた。


「あの!私誰かとお話ししたかったみたいです!だから、その......お二人が良かったらお話ししませんか?」


モニターの中の少女が言う。


_良いよ!何を話す?俺達ここに来るまでにも色々な所を周って来たから話題には事欠かないよ?


SNSアプリにそう呟きを投稿するのは、人間の少年だ。


_ついでに宜しければ、何処か安全に宿泊出来る場所があれば教えて頂けませんか?


そう呟きを投稿するのは人ではなく、変わったデザインのドローンだった。


「ん?会話をしたいのなら直接会いに行った方が良くない?」


「そうですね。その方が良いかと思います。」


_それじゃあ、今からそっち行くから待っててー。


と言う呟きを最後にタブレットの電源を落とすと、一人と一機は、とりあえず少女が映し出されている巨大なモニターを目指して移動を始めた。

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