終末世界にひとりきり
鳥の音
空色の夢
「青いねー、空……。」
かつては人が出入りをしていたであろう大型のスーパー。
今では訪れる人のいなくなったその建物の屋上部分の駐車場スペース。
その真ん中に大の字に仰向けになっている少年がぼやいた。
「青いですね。」
少年の独り言に返答した物は人ではなかった。
電子レンジくらいのサイズの黒い箱に四つのプロペラのようなパーツが取り付けられたデザインの大型のドローン。
返答はそのドローンから発せられた物だった。
機械から発せられたとは思えないほど違和感のない女性の声だった。
「ふわふわだねー、雲。」
「ふわふわですね、天気が良いおかげで充電の効率が大変良いです。」
「そっかー……。」
大きなあくびを1つして少年はぼんやりと雲を眺める。
「雲を見るとさ面白い形の雲を探したくならない?」
「私はそう言った経験はないですかね。」
「えー……。」
「何ですか?そのつまらない奴だなとでも言いたげな顔は。」
少年の表情が気に入らなかった用でドローンは不機嫌だと主張をする。
「ほらあの雲、飛行機みたいに見えない?」
そんなドローンの主張を無視して少年は雲に指を指す。
ドローンは少年が指さした雲を観察した。
「照合率5,2パーセントですね。私には似ているようには見えません。」
「夢がないなー。」
「私は機械ですので夢は見ませんからね。」
「ごめんって、怒らないでよ。」
声色はいつも通りの物だったが長い付き合いからドローンが機嫌を損ねてしまった事に気付き謝る少年。
「不思議です。」
謝った事で機嫌を治してくれたドローンが呟く。
「不思議って?」
「何故あれが飛行機に見えるのですか?」
「うーん……結構難しい質問だな。」
ドローンの問いに考え込む少年。
「そうだな、人って結構曖昧な生き物だからさ。大雑把に物を判断しちゃうんだよ。でも機械は完璧な物だから、少しでもおかしな部分があると疑ってしまうんだよ。」
「なるほど……概ね納得出来ました。」
ドローンは再び空を眺める。
「他にも何かに似ている雲はありますか?」
「うーん……そうだな。」
少年も再び空を眺める。
「アレは兎、アレは車、アレはクジラ。」
「……見えないです。」
「アレはハム、魚、コッペパン、ラーメン……お腹空いたな……。」
「全然見えません。他にはありますか?」
「見えるようになりたいの?」
「なりたいです。」
以外な返答に少年は少し驚いた。
「私の方が劣っているようで不愉快です。」
「あーそうなの……。」
そんなやり取りをしているとぐぅーと音がする。
音の元は少年のお腹だ。
「ご飯にしない?」
「そうですね、準備します。」
少年は飛び起きると歩き出す。
ドローンも少年の後を追うために飛行を開始する。
「何か食べたい物はありますか?」
「うーん……ラーメンかな。」
「ではスーパーの中を探しましょうか。」
適当な会話を交わしながら、少年とドローンは廃墟となったスーパーに入って行く。
空は依然として青く晴れ渡っていた。
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