くたばれ女主人!さすがにもう面倒見きれねえよ
新巻へもん
はあ、マジかよ
転生は過労死の後に
気づくと光り輝く空間に俺は横たわっていた。床はふわふわとした雲のよう。ここは誰?私はどこ?じゃなかった。ここはどこ?私は誰?だ。
えっと、俺の名前はなんだっけ。くそ思い出せない。確か早朝まで完徹キメて一端着替えを取りに家に帰ろうとしてたんだったよな。手に持っていた書類が風に飛ばされて、手を伸ばしたら、そこは橋の上。バランスを崩してドボンとなって、息ができない、苦しい~、となったところまでは覚えている。でも、やっぱり俺の名前は思い出せないな。どこかで頭をぶつけたのか?
そこへ、透き通った声が響く。
「賢者シューニャよ。気づきましたか」
周りを見渡すが誰もいない。
「誰かいるのか?」
「もちろんいますよ。シューニャ。あなたの側にいます」
振り返ると長い黒髪でうっすらと笑みをたたえた者がいた。長身で男なのか女なのか分からない。
「誰だお前。それにシューニャってなんだよ」
なぞの人物の含み笑いが大きくなる。
「私は神です。シューニャはあなたの名前」
やべえのが出てきた。自分で神とか言っちゃってるよ。それに俺の名前はそんなんじゃねえ、ってか何だったっけ?
「信じられないようですが、私はこの世界の神なのです。あなたを元の世界から召喚しました」
わーい。やばさ倍増。マジかよ、勘弁してくれ。今日も9時からまた仕事なんだからさ。
「俺を誘拐したって金はとれないぞ」
「まだ混乱しているようですね。あなたは元いた世界では死んでます。お気の毒ですが」
「死んだあ?」
素っ頓狂な声が出る。
「はい。完全に。僅かの疑問もありません。この世界に召喚するにはそうするしかなかったので」
「なんで俺なんだよ。しがないサラリーマンだぞ」
こちらを見てください。見知らぬ相手の頭上に数字が浮かぶ。ひい、ふう、みい、……。12桁の数字だ。
「それがなんだってんだよ?」
「おや、ご存じない?あなたのマイナンバーです。乱数を発生させて選ばれたのがこの数字。一致する確率は1兆分の1。ものすごい幸運ですね」
それって、幸運なのか?
「それで、転生のお詫びとして、色々特典が付きます」
おお、なんかいいねえ。
「本当は修行したり、武器取得のクエストなんかもしてもらう必要があるのですが、今回は特別に省略します。まず、シューニャさん。あなたはこの世界の者の中ではほぼ最強の力をもつことになります」
やったぜ。俺TUEEEできるじゃないか。
「空も飛べますし、見たことのある相手に変身することもできます」
すげーな、おい。
「さらに最強クラスの武器である真紅のハルバードを差し上げましょう。この武器があればまさに血の雨を降らせることなどたやすいことです」
おお。かっけえ。
「さらに伸縮自在。100メートルから1センチメートルまで長さを変えることができます。今なら、耳の中にこっそり収容できちゃう専用ホルダーもプレゼント」
そう言って、左の耳に何かを取り付ける。
「それでですね。シューニャさんにはある任務についてもらいます」
「それはどんな?」
「ある人をその人が望む場所まで護衛する任務です」
「なんだ。そんな簡単そうなクエストでいいの?」
「ざっと3万キロほどありますが」
「やっぱり簡単じゃないか。それ飛んでいけば……」
「それはルール違反です」
「車ぶっとばせば、まあ1か月ぐらいだろ」
「この世界にはそんなものはありません」
「え?」
「基本的な交通手段は足です。歩いてください」
は?そんなんじゃ何年もかかるじゃねーか。
「なんかメンドクサイなあなんて思うんだけど」
「それがあなたの使命です。抗議は却下します。まあ、詳細は護衛相手に聞いてください。ちなみに、護衛していただく方の選定に時間かかるんでそれまで適当にしててください。それとこれが飛び方とかのマニュアルです。では、活躍を期待していますよ」
そのとたん、足元のふわふわしていたものが俺の周りだけ消える。俺はたちまち落下していった。長い間落下し地面に激突して大穴を開ける。バカヤロー。普通なら死んでるところだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます