序章 3話 起死回生の異世界転移
俺含む人々を天国と地獄に分けたメールから1週間たった金曜日。本日17時までには全国の一般ユーザーとVIPユーザーにVRが届き、18時にRC版がオンライン上で一斉配信される手筈となっている。ちなみに今日のためにバイトは入れていない。入れたってどうせ上の空で皿を割り注文を間違えるからな。
時刻は15時37分。それが届くのを今か今かと待ちわびながらスマホを見ると、SNS上のトレンドにはもう「LINK SPIRITS」と「ヴァルタナ」のふたつが上位に上がっていた。
やはりと言うべきか、『MASKめろん』のメンバーはもれなくVIPユーザーに選ばれていて、彼らの待ちわびるつぶやきは瞬く間に拡散されていた。他のVIPユーザーにはどんな実況者が選ばれているのかそういや全然調べてなかったなと思い検索すれば、出るわ出るわ人気ユーザーの数々。人気アニメの偽実況で有名なkoike屋、数少ない女性実況者モモヒキ星人、プリンス系女性人気NO.1(俺らの敵)ソータ社長、鬼畜ゲー無理ゲー狂いのたひにん……etc、etc。
「すげえな」
この有名実況者連中に、2時間後には会って戦ったり、共闘するわけだ。
ほぅっと息をついたのと同じタイミングでインターホンがなる。時計の方に目を向ければ、もう16時を回っていた。
「キタキタキタキタ……」
はやる気持ちを抑えながら、判子を押して荷物を受け取り、部屋へかけ戻った。
箱を開けば、従来の物によく似た、でも全くちがう、
「これが……『VR‐LINK SPIRITS』」
視覚だけじゃなく、痛覚以外の感覚全て、つまり『精神』をネット上にリンクさせる世界初のVR。
『LINK SPIRITS』の上に同梱されていた説明と手紙ーー要約すると18時にゲームがリリースするから諸設定行っといてね的なことが書いてあったーーを読み、ようやく『LINK SPIRITS』を取り出す。PC、SNSその他もろもろと『LINK SPIRITS』を同期させながら、ワクワクしていた。この機械こそ、俺の実況者ライフにおいて起死回生の切り札となるのだ。
(人気ユーザーの殆どは恐らく録り溜めするだろうし、そこまで早くは投稿しない……その間にいち早く動画を上げてブーストさせる!)
これだけ話題のゲームであれば、誰もが内容を知りたいだろう。VIPユーザーが全員で何人なのかはわからんが、一般ユーザーの当選者は3000人。幼なじみのようにただのゲーム好きや、実況者達とゲーム上で会いたいなんていうファンが多く、俺と同じようなマイナー実況者は少ない……筈。
と、予め設定していたアラームがなった。18時まであと5分。SNSに《あと5分。今日中には動画あげるから見に来てね!》と告知をし、設定し終わったそれを着け、起動させた。ゲームをスタートさせるまでは普通のVR
と同じであり、画面上には《welcome to “LINK SPIRITS” ヴァルタナストーリー配信まで暫くお待ちください》とさっき諸々と同期し終わった時と変わらないメッセージが表示れている。
少しすると、3:00の数字が現れ……カウントダウンが始まった。
あと3分。
(VRMMOってどんな感覚なんだろーな。よったりとかすんのか……?いやいや、そういうのも含めてテストはクリアしたんだろうし)
あと2分。
告知に対するコメントが画面上部に通知された。
あと1分。
幼なじみからメッセージだ。
『もうすぐだな、スタートするステージはバラバラなんだっけ、同じだといいよな』
返信しようとした時、ポーンという音がなり、
そこから、ぶつんと記憶が途絶えた。
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