終末魔法は教えない。

いちみんればにら

第1話 彼の居場所は誰も知らない。

 かの魔法使いは、このどうしようもない世界を変えたかった。

 あらゆる理不尽を、まとわりつく不自由を、際限のない不幸を感じない真っ白な世界を、心の底から夢見ていた。

 しかし彼の投じた一石は、地上から海底まで、地上から上空までをも破壊し蹂躙する巨大な隕石のごとく世界を消し炭にし、すべての生命を脅かしかけた。世界を変える方法を、間違えたのだ。

 結果としてその方法、すなわち【魔法】は、完遂を目前にして、当人によって中断された。彼が世界から姿を消すという幕切れによって。

 以来、魔法を使うことは厳しく制限され、使用者を管理する社会が各地に生まれた。世界は、世界を変えようとした彼を許してはくれなかった。


 かの魔法使いは後悔を続ける。

 このどうしようもなくなった世界のどこかで、ひっそりと、後悔をし続けている。

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