僕は青春を謳歌できているのだろうか?
星乃カナタ
第1話 青春の始まり?
入学式から1週間が経った。
僕は未だ慣れていない通学路を歩く。
とてもいい天気だ。
この地区は特に目標がない人は大体の人が僕の通うことになった私立
基本的に雨高は徒歩勢が半数を占めているが、中には近所でも自転車で来る人もいる。ちなみに、バスも出ているらしい。
家から10分程歩き、何事もなく雨高に到着した。
ガラガラッ
僕のクラス、1-Cの扉を開け、教室の真ん中辺りの列の後ろの席へと歩く。
「よっ、春夜!相変わらず眠そうにしてるな」
席に着くと前の席から声を掛けられる。
目の前に居るワックスでつんつんに尖らせている黒髪に少し目付きが悪く、不良みたいな顔付きの男は、小学生の頃からの腐れ縁である
ちなみに春夜とは僕の事。
「実際、眠いしな…ふわぁ…」
「なんとまあ大きな欠伸で。ところで春夜は部活決めたか?」
…あっ。すっかり忘れてた。
「…その顔は忘れてたって顔だな」
「よく分かったな」
「伊達に長年一緒に居ないからな。で、どうすんだよ。確かに今週中じゃなかったか?」
プリントを出して眺める。確かに今週中だ。そういえば昼休みとか放課後に色んな部活の先輩達がわいわいやってんなーとは思ったけどさ。
「部活ねぇ…。これと言って入りたい部活無いしなぁ…」
「んじゃあ今日は適当に見てくか。せっかく高校生になったんだし、帰宅部とかつまんねーだろ?」
「んまあ、確かにね」
僕だってそんなのはつまらないと思う。中学の時は特に興味もなかったし帰宅部だったけど。
そんなこんなで僕は翔と放課後部活巡りすることになったのだった。
そして放課後。
「部活見学するのはいいけどあまり遅くならないようにね。それじゃ、さようなら~」
僕のクラスの担任の
「なあ、春夜」
「ん?何、翔」
「俺見に行きたい部活あるんだけどお前来る?」
「どうせ運動部だろ?僕、文化部がいいからいいや」
「そうか、まあそう言うとは思ってた。んじゃ、もし部活決めたら教えてくれよな」
何故教えなきゃならんのだ。あとそっちから約束破るのな。
適当に返事をしてその場を後にする。
って言っても適当に校内をふらつくだけなんだけど。
「ねえ、そこのキミ…」
「ん?僕ですか?」
文化部の部室棟の2階を歩いていると、女性に話しかけられた。
振り返るついでに教室の札を見ると【ゲーム愛好部】と書かれていた。
「うん、そうだよ!もし良かったらうち見てみないかな?」
「ええ、まあいいですけど…」
誘われるがまま、先輩に連れられてゲーム愛好部なる教室に入る…が、次の瞬間、ガシッと僕の肩を掴まれた。
「つっかまっえた♪」
「…へ?」
あまりにも突然過ぎて頭がついていけていない。
「今日から君はここの一員!」
「…え、いや、僕まだ入るなんて言ってな――」
「勧誘時に教室に入った新人は強制的にうちの部員なの!」
「なんて勝手なっっ!!」
いくらなんでも勝手すぎる。入るだけで強制入部って聞いたことない。
「しょうがないじゃない。ここ、私と他の2人しか居なくてあと1人入って来ないとこの部が無くなっちゃうの!だからね?この部を助けると思って入ってくれませんか!」
そう言って、先輩は両手を合わせてお願いのポーズをとる。頭を下げる際、背中まである黒髪が揺れ、シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。柑橘系かな。
んまあ、別に入りたい所もないしなあ。でも何する部とか何も知らないし。
「そもそも、何する部なんです?色々と唐突過ぎてよく分からないんですけど」
「そ、それもそうだよね。えっとね、簡単に言うとゲームする部だよ」
「そのまんまですね」
「ゲーム愛好部だもん」
「さいですか…」
姫咲部長(名札見た)は、苦笑いで頬を掻く。
「君はゲーム好き?」
「ええ、基本的に1日中やるくらいには。あと僕、四季って言います」
「そっか!じゃあ、四季くん!うちに来てくれないかな?特に活動目的とか無いし第2の自室だと思ってくつろいでいいから、ね?」
この部を存続させたいらしく、必死な姿に僕は断ろうにも断れなくなってしまった。
「…じゃあ、とりあえずお試しってことで……」
「…本当?」
「ええ、本当です」
「わあ!ありがとう四季くんっ!!」
あまりにも嬉しいのか僕の手を掴んでぴょんぴょんと跳ねた。その際に揺れる双丘には目が行かないように必死に逸らしていたけど。
「それじゃ、今日からよろしくね、四季くんっ!」
半ば部長に流されて入部することになってしまったけど、何故か僕は後悔なんてなかった気がする。
―――ここから、僕の高校生活が始まった。
……気がする。
僕は青春を謳歌できているのだろうか? 星乃カナタ @kanata_sorano
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