ミドル戦闘B-2

ゲートに叩き込まれた燕が起き上がると、そこはセッパ本社ビル屋上だった。

しかし、そこには誰もいない。

他の人間は異空間の屋上で戦っているのだろう。

普段の燕ならば異空間に突入することも可能なのだが………

刀は無く、あったとしても普通の刀では突入困難、出来たとしてめぬきと戦えばまた砕かれてしまうだろう。


「あれー? ブラッドヴェインじゃん!」

「こんなとこで何してんの?」

声を掛けてきたのは………魔朱だった。

「あっ!? 刀持ってない!?」

「ちぇー、ついにあの妖刀さんをホテルに置いたと思ったら、戦う気まで無くしちゃったのー?」

「ホテルの一室に放置だよー?」

「なんか、今のブラッドヴェイン、あんまりカッコよくないし、弱そうー。」

「また勝負しようねー!」腕ぶんぶん


教えてもらったホテルの一室。

侵入は容易く、見張りも居なかった。

ふかふかのダブルベッドに祝が寝かされていた。


ホテルから出た、その瞬間。

頭上から、声が響く。


目前のビルの屋上、狗が街の灯火をうっすら浴びながら立つ。


「燕ちゃん、自分何してるん?」

「その刀を自分の意志で持っていくんか? それは流石に許されへんわ。」

「また奴隷になりたいんか? 民衆と、あの腐れ女の奴隷に?」

「さよか。」

「どうしても行くって言うなら………勝負や。」

「お前の選択でオレを斬ってみろやあぁぁああ!!」


ビルの壁面を駆け下りながら、狗が抜刀する!!


「オレが何したいかって?」

「燕───お前に帰ってきて欲しいねん。そんだけや。」

「あんな、オレがお堂の皆を斬ったんは、自分がよう分からんかったんや。自分はどれくらい強くて、どの位置におるべきなのか、誰を指標にしたらええんか。まさか皆あんなあっさり斬れるとは思わんくて、試しのつもりが鏖になってもて、答えはもう分からんかと思った………燕、最後に絶望しながら自分に斬りかかるまではな。」

「あん時の眼は忘れられへんで。ただただ相手を見るだけの眼ぇ。そこに混じるもんはなんも無かった。オレはそれに怯え、憧れ、答えを得たんや。」

「オレは燕の為におる。燕を完全な剣士にして、オレはその完全な燕に斬られる。それこそがオレの人生の答えなんやってな」

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