第2話 Beginning of the end

赤坂健太は純真無垢じゅんしんむくな少年だ。いや、“だった”の方がより正確かもしれない。彼の世界は小学生頃から歪み始め、そして中学3年の夏に崩壊した。

彼は人見知りな性格だったが親友と呼べるほど仲の良い友人Rがいた。二人は幼稚園時代からの知り合いで、健太とRは学級委員や生徒会に選ばれるほど人から慕われていた。遊ぶ時は勿論もちろん、気が付けばいつも一緒に行動するほどの関係性だった。しかし二人の住む世界は決定的に違っていた。健太は室内でゲームをするのが大好きだった。Rは屋外で体を動かすことを好んだ。健太は生真面目な性格で純粋な少年だった。Rはやんちゃな一面があり、よく悪友と悪ふざけをして問題を起こすことがあった。

最初は些細ささいなことだった。小学生高学年の頃からRは以前より外遊びするようになった。球技全般が苦手な健太はこの時初めて自分の一方的な都合で誘いを断った。今思えばこれが彼の“症状”の引き金だったのかもしれない。それからRは、悪友たちとエアガン遊びだの下ネタを大声で叫べるかだの健太には到底理解不能な遊びに興じるようになっていき、二人の間には溝が生じつつあった。時間の流れと共に健太はRの誘いを断ることが増え、Rも健太を遊びに誘わなくなっていった。中学に上がっても関係は変わらず、Rはより過激な遊びに興じていった。遂には同じ陸上部に所属するクラスメイトをハブり、その事で教師に呼び出しを食らうまでになった。健太は何もできず、傍観者という最低の立場で事態が早く収束するよう祈るしかなかった。けれど本当は分かっていた。遅かれ早かれRの矛先は健太に向くことを。

そして中学3年生になった。以前はあんなによく喋っていたのにこの時期は一日に数回会話をすれば上出来という関係性にまで悪化していた。一緒に登下校することも少なくなり、そして夏を迎えた。最初に違和感を覚えたのは中学総体まで一ヶ月を切った部活での出来事だった。ホームルームが終わり、いつものように部室に直行し、部員みんなに挨拶あいさつしていた時。Rと取り巻きのSが健太の挨拶を無視し、「行こうぜ」とSがRを連れて行ってしまった。瞬間健太は察した-。その日から彼はRたちに集団無視されるようになり、他に友達がいなかった健太は孤立した。

楽しかったとの日々が崩壊した瞬間だった。

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