第1話 廻り続ける日々
「なるほど」
思わず口に出してしまった。吸血鬼の気持ちがわかったような気がした。引き
世の中には『思春期症候群』なるものがあるらしい。不安定な精神状態によって引き起こされる不思議現象とネットで噂されているが、大半が信じていないだろう。俺もその内の一人のはずだった。いつからだろう、他人の『心の声』が聴こえるようになったのは。いつものように電車通学してる時だったと思う。突然四方八方から周囲の声が大音量で響いてきた。思わず耳を
目覚めると白い天井が見えた。
「ここは…病院か?」
あれ、どうして俺、確か学校に行く途中で…。その時病室のドアが開いて看護師さんらしき人が入って来た。
「あっ!目が覚めましたか?体の調子はどうですか、赤坂健太さん?」
それから看護師さんから自分が電車の中で倒れ、ここに運ばれたこと、特に異常が見られず人混みに酔ったのではないかということを告げられた。
「では私はそろそろ行きますので何かあったら呼んでくださいね」
「はい、ありがとうございます」
しかし俺はこの時既にあるとんでもない症状を引き起こしていることを確信してしまった。だって彼女の、〈人混みに酔っただけで倒れないでほしいわ。仕事が増えていい迷惑よ〉という心の声が聴こえてしまったんだから。
以来俺は人混みを避けるようになった。学校も休むようになった。やがて買い物に行く気も無くなり、今の生活が続いている。当然親に症状のことを相談したが相手にしてもらえず、彼らの聞きたくない内面が聴こえてきて余計に辛くなった。そうして俺は自分の世界に閉じこもっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます