旅立ちの時
勝利だギューちゃん
第1話
季節は冬・・・
この辺りは海に面している・・・
夏場は海水浴客で賑わうが、冬は殆どいない・・・
漁船のある港は、少し遠くにある・・・
でも、冬に浜辺で、時々男の子を見かける。
私のクラスの、男の子だ・・・
彼の名誉のために、Mくんとしておく・・・
Mくんは、教室ではいつもひとりでいる・・・
誰とも話さないし、誰も彼と話そうとしない・・・
休み時間になると外へ出て、授業になると戻ってくる・・・
誰も彼を気にかけない・・・
教師でさえも・・・
「1人が犠牲になれば、他の皆が団結する」
そういう考えなのだろう・・・
私もそうだった・・・
でも・・・
ある日を境に、彼に興味を抱くようになった・・・
悪い意味ではない・・・
Mくんを浜辺で見かけるのは、決まって雨の日・・・
晴れはもちろん、曇りの日も見かけない・・・
「注目してもらおうと思ってる」
Mくんの事を、悪く言う人は多い・・・
Mくんも傷ついていると思うが、それを見せない・・・
(もしかしたら、強い子かも・・・)
ある日、思い切って声をかけてみた・・・
でも、いざとなると、言葉が見つからない・・・
「・・・寒くない・・・?」
そうとしか、言えなかった・・・
「・・・平気・・・」
蚊のなくような声だったが、聞きとれた・・・
「どうして、雨の日に、いるの?」
「・・・人が・・・少ない・・・」
私の声は、届いているようだ・・・
「どう・・」
「悪いけど・・・」
「えっ?」
「僕とは、関わらないほうが・・・いい・・・」
そういうと、Mくんは去って行った・・・
私は無言で、見送ることしかできなかった・・・
次の日から、Mくんは学校へ来なくなった・・・
誰も気にとめない・・・
いや、最初から存在しなかったみたいな反応だ・・・
放課後、私はMくんの家を訪ねた・・・
でも、既に空き家になっていた・・・
私はMくんの事が、たまらなく心配になった・・・
私は旅に出よう・・・
Mくんを探す旅に・・・
もし、Mくんが笑われるのなら、一緒に笑われる・・・
うとまれるのなら、共にうとまれる・・・
そばにいたい・・・
探し続ける・・・生ある限り・・・
旅立ちの時 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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