君の瞳
黒木初
第1話 「待島スミカ」
―例えるならばそれは、青のプリズム。
―私のなかで光輝く、その強いイメージ。
私は、彼女と会った日のことを、今から綴ろうと思う。
そして彼女との思い出を。
しかし、ううん、これは難儀だ。
書いてはくしゃくしゃにして丸め、丸めたものをゴミ箱に纏めて突っ込んでいる。
ゴミ箱はもう一杯だ。
「めんどくさいなあ………」そんなぼやきが、私から漏れる。
それでも書かなくてはいけない。
そんな気がしていた。
「ソラハさん、忘れ物だよ」
そういって話し掛けてくれた小柄な女の子。
茶色っけのある黒い髪と、透き通った声。
そして何より印象に残ったのは、青い瞳だった。
「………ああ、うん、あ、ありがと」
私はきょどってしまった。ちょっと自分でも吹き出しそうなくらいに。
私は友達があまりいない。
一人で本を読んでいる方が、気楽。
だから、私に声をかけてくれる人は、そんなにはいない。
そういえば、彼女………彼女が人と喋っているのもみたこと、ないや。
私はカバンを受け取りながらいった。
(それにしても、なんで私はカバンを忘れたまま下校しようとしてるんだ?)
「待島さん、ありがと。よく私の名前なんて覚えてたね」
待島さんは吹き出す。
「ソラハさん。青景ソラハさん。あなたもわたしの名前を覚えておりましたのを、本官、たったいま聞き届けました!」
二人で、どちらからともなく、笑い出す。
「あ………うん………待島さん、美人だったから………」
「ストップ。美人っていうのは差別よ」
え、って、言葉を切り返す間もなく彼女は告げる。
「わたしは待島スミカ。改めてよろしく。スミカでいいよ」
そうやって彼女は飛び切りの笑顔を見せた。
その瞬間から、私は。恋をしていた、のかも、知れない。
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