円を回して得たものは

カゲトモ

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 当たらないと思っていたのに。

「おめでとうございます~!」

「あ、ありがとうございます」

 恐縮して頭を下げると、ベルを持っていた女性の隣で責任者の商店街事務長が恰幅の良い腹を揺らして笑った。

「がっはっはっ! さすが花菱君、良い引きしてるねぇ!」

「とんでもないです」

 本当にとんでもない。まさか商店街に店を構えている者が、商店街の福引で一等を当てるなんて。しかも俺の店は福引券配布協力店じゃないんだよなぁ~。

 出来ればこの一等も無効にして欲しいくらいだ。いくら買い出しを商店街内でしていると言ってもこれは、ちょっと予想外と言うか。もともと引く気なんてなかったのにぃ。事務長が引いてけってうるさいからぁ。

「おめでとう!」

「あ、ありがとうございます」

 福引会場であるテントの中でもその外でもいろんな人から拍手が送られる。

 や、やめてくれ・・・!

「一等だって、すごーい」

「ねーっ」

 なんて言葉が聞こえてくる。は、恥ずかしい・・・商店街の人たちにも笑われているしっ。

「ほら、スカイさんよ」

「へぇ、凄いのねぇ」

「わぁ、一等って本当に入っているんだねぇ」

 俺も一等が本当に入っているだって初めて知ったよ。こういうのは当たってもせいぜい下から二番目くらいの奴だったのにさ。

「さ、遠慮せず受け取ってくれ。ハワイ旅行券だ」

 しかもハワイ旅行券・・・まじか。

「あ、ありがとうございます」

「可愛い彼女と楽しんで来るんだよ!」

 や、やめて。その親指を立てたポーズもニヤついた顔も。本当に嬉しそうに言ってくれるからこそ反応に困る。大体一緒に行ってくれる人なんていないのに・・・どうしたらいいんだよ。

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