正解と不正解と
カゲトモ
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「お待たせ」
すっかり暗くなった店内でさらに濃い影が二つ。まさかこいつと仕事終わりにまたこうやって飲むことになるとは思っていなかった。
「おー、待たされました」
「別に待っていて欲しいなんて一言も言ってなかったけどな」
こいつが勝手に待っていただけだし。
「あー、まぁたそんな言い方するー。素直じゃないなぁ、想太は」
「お前に対してはすっごぉく素直だと自分では思っているんだけどなぁ?」
嫌味だってこんなに素直に出て来るもの。
「またまたそんなこと言って。俺と話したかったのなら早く言えば良かったのに。素直じゃないなぁ」
「いつ言ったよ」
一言もそんなこと言ってないし。突然遅くに店に来たと思ったら、久しぶりだし閉店後にちょっと話したいとか言っていてさ。話したいだけなら速水の店が定休の時にでも時間を取ったって言うのに。
「で、何だよ。てかなんで今日こんな遅くに店に来たんだよ。明日もランチ営業あるんじゃないの?」
最近奥さんと一緒にやっているバルが繁盛しているって聞いたぞ。ネットでも話題になっていたし。
「あぁ明日は休みなんだよ」
「休み?」
「なんか敷地内の工事だって。公園の設備を新しくする、とかでその辺一帯の店も営業を停止しなくちゃいけないとかで」
「へぇ、凄いな」
「まぁな。なんとか村おこしの結果が出始めているって言うか。それでさらなる集客を目指すとかで。営業できないのはちょっと困るけど、まぁちょうどいいし」
「奥さんつわり酷いの」
「ん~想像していたよりは辛くないって言ってたけど、やっぱりちょっとものによっては作っていても気持ち悪くなるみたいで、今はサブで働いていた子に頑張ってもらってる」
「そっか」
順調じゃん。店も流行っているみたいだし、子供だって。良かったじゃん。
「良かったって顔じゃないけどな」
「何言って」
「どうしたんだよ、珍しいじゃん。なに思い詰めてんの?」
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