第129話 ピエールの話22

アンフィスバエナの対策が難しいのは、

それが特注機であることが一番の原因かも

しれない。

 

しかし、方針はシンプルだ。ダメージを確実

に与えて、蓄積させる。そして、今回は、

遊撃担当のセイテンタイセイを乗せていない分、

遠隔機がそれぞれ一機追加されていた。

 

しかし、シヴァ以外の最初の一機が全て

一分以内に破壊される。遠隔機2機目となった

彼らだが、少し癖が見えてきた。

 

シャカの火炎放射、カーリーの超近接冷却、

クリシュナの接触による高電圧、そして、

シヴァが使用する弾丸は、味方をも

巻き込む、腐食弾だ。

 

「マルーシャ!いまっ!」

 

マルーシャに接近のタイミングを告げるエマドと

フェイク。傍受した音声通信が、イゾルデの

乗るアンフィスバエナのモニターの一画に

小さくテキストで表示される。

 

パイロットが発する声の情報は、嘘も含まれるため

普段はあまり気にしない。しかし、そこにマルーシャ

の文字を見つけ、イゾルデは逆上した。

てっきり、母艦か空母にいると思っていたのだ。

 

乗っているのはこれだ、氷のように冷たい表情を

したこの人型機械。イゾルデの意識がカーリーに

偏り過ぎる。

 

クリシュナが、アンフィスバエナの背面側機体の

腕をとり、通電させる。高温と低温、腐食ガスと

過電流により、動力系統か電気系統が摩耗し、

その腕は動くことをやめた。

 

そして、それぞれ4機目の遠隔機を使うころには、

背面側がほとんど停止している。イゾルデは、

焦り出した。

 

カーリー4機目の胸部は、搭乗機と同じ構造を

していた。イゾルデは、カウント間違いを起こした。

ふだんなら、人型機械5種で、遠隔機は3機、

今回は4種で遠隔機は4機の可能性がある。

 

だから、胸部が搭乗機の形をしている4機目は、

カモフラージュで、まだ遠隔機の可能性があるのだ。

 

遠隔機ならなるべく近接してはいけないが、

搭乗機なら無理してでも捕獲したい。捕まえれば

他の機体も停戦だ。

 

そして、シャカの遠隔ポッドによるシールドで

守られながら接近してきたカーリーに、冷却

攻撃をまともに食らう。そしてシャカの

火炎攻撃、クリシュナが組み付いて雷撃。

 

局地戦仕様でもない限り、この攻撃には機体

寿命が耐えられない。正面側上半身も停止

させたアンフィスバエナは、残った推力で

母艦へ逃げる。

 

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