第128話 ピエールの話21

ヒルダ・ウッテンは、フロアの隅で震えていた。

途中で事態に気づいたのだろう。普段は下の人間に

かなり高圧的な態度で接していたらしいが。

 

聴取であっさりと白状した。そこは、コウエンジ連邦軍

空母の中、そこから、木星圏へ安全に移送するという

条件付きだ。家族は・・・、いない。

 

この小物の背後にいたのは、地球のラグランジュ点

第3エリア、ニコリッチ商会の令嬢、イゾルデ・

ニコリッチ。商会の実権をほぼ握りつつあった。

 

コウエンジ連邦は、ただちに空母3隻を送る。

同時に、木星圏にも応援を頼んだ。目的の空域までは、

約2日。

 

参加したのは、先ほどの4名に加えて、アラハントの

フェイク・サンヒョク、ウイン・チカ、エマド・ジャマル、

そしてマルーシャ・マフノ。アミは今回参加していない。

 

人型機械母艦には、火力担当のシャカ、狙撃担当の

シヴァ、防御担当のクリシュナ、そして支援担当の、

今回はカーリー、氷結仕様。

 

クリシュナも、普段と違っていた。武器を換装したので

はなく、腕そのものを特殊なものに換えている。

触った2点間に高圧電流を流せるようになっている。

 

イゾルデは、コウエンジ連邦軍接近の報を聞いていた。

そして、空母乗員の名簿情報の中に、見つけたのだ。

ぜっこうのチャンスだった。

 

イゾルデは、すぐさまニコリッチ商会の中型空母

3隻を手配する。必ず生け捕りにしてやる、

自ら出撃するつもりだった。なぜその空母に乗って

いるのか、といったことは、もう考えなかった。

 

そして、ふたつの軍はその空域で衝突する。

元第5小隊は、遠隔機とミニオン機を射出した。

対するニコリッチ軍は、イゾルデ自ら出撃する。

 

彼女が乗る機体、アンフィスバエナは、大型機だ。

そして、遠隔機を持たない。搭乗機でいきなり

出撃だ。そして、実際強かった。ぜったいの自信があった。

 

短いヘビのような下半身に、人型の上半身が

背中合わせにふたつ生えている、恐ろしい姿だ。

腕も、ひとつの上半身あたり4本ある。

 

それに対し、中央正面に位置取るのは、カーリーだ。

それを援護するかたちでシャカ、クリシュナは、

ミニオン機を気にしながら後方へまわる動き。

 

先に大量のミニオン機同士が戦いを開始する。

 

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