第124話 フォントーニの仕事

フォントーニ・サーセンがその就職情報誌を

見つけたのはその日の午後であった。

 

もう少し正確に言えば、その募集記事を見つけた。

 

あなたも皇帝になれる、その記事の冒頭には、そう

書かれてあった。

 

応募条件には、身長体重などとともに、顔の3D写真

を送り、それに合格することなどがあった。

報酬額や寮の完備など、働く条件がかなり良かった

ため、フォントーニは写真を送ってみることにした。

 

その後、面接が行われることになり、木星圏への

旅費などすべて向こう持ちとなる。いい話だ。

 

フォントーニは、役者を目ざしていた。レッスン

やオーディションの費用をこれでまた稼げる。

仕事内容が少し気になったが、それはいつものことだ。

変わった仕事でも、それは芸の肥やしになる。

 

採用が決まったので、髪を短く切り、金髪に染める。

 

職場には、フォントーニのほかに5名の担当者がいた。

まとめの人間が、現場担当をあと2名追加して、

7名で週1日勤務としたい、と言っていた。

 

週休2日で、勤務日以外は歌や踊りのレッスン、

セリフの練習などだ。これにも給料が出る。

 

しかし、一番つらいのは、数百枚の紙に大きなハンコ

を押す練習だ。過去のアルバイトで電子スタンプを

押したことはあるが、実物はほとんどない。

しかもこの大きさだ。

 

しばらく続けているうちに、バイト仲間から

面白いことを聞いた。謁見の間でほとんど毎日

文武百官が居並ぶが、高い確率で参加する

アキカゼ・ホウリュウイン参謀長、


そして、武官のアグリッピナ・アグリコラ、ユタカ・

サトー、ドン・ゴードン以外は、ほとんどバイト、

ということらしい。

 

そのうち、皇帝と文武百官のバイトのメンバーだけで

飲みにいくようになった。

 

はやく役者になって、安定した収入を得たいと思って

いるフォントーニであるが、たまにアルバイトで

高額なのに仕事自体も何か面白い、というのが

あるのがわかってきた。

 

ただ、他国の使節が来るときだけは緊張する。

 

こないだも月の第3エリアから、ナミカ・キムラという

猛将が来訪したが、その迫力に自分もそうだが、

アキカゼ参謀長がかなり狼狽してたな。

 

新人もどんどん入ってくるので、できれば他国の

使節は新人に任せたい、そう思うフォントーニだった。

 

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