第93話 ゴシの話34

マルーシャがアミにハネマン振り込んでハコった

のを見たところでもうひとつ隣を覗いてみると、

タタミの部屋でトム・マーレイ少尉とブラウン・

ノキア少佐が何か作業をやっている。

 

「タタミじゃなくて、畳、イントネーションが

おかしいよ!」

アミの鋭いツッコミを受け流して隣の部屋に入ると、

トムとブラウンが細かい部品を組み立てていた。

プラスティックモデルだ。

 

トムのはスペースカーマリアリティの機体を

立体化したものだ。これはアシュラの前機種、

コウモクテンだ。かなり精巧にできている。

 

ブラウンが造っているのは、古い型の宇宙戦艦だ。

おそらく旧世紀の2Dアニメーションに出てくる

やつだ。

 

「最近のやつはほんとよく出来てるからな」

ブラウンが呟く。

 

「え、これ、二人とも自分で買って持って来たん

ですか?」

「え?」

当たり前だろ、という顔でこっちを見てくる。

 

「あ、いや、二人ともいい歳なんで、買って持って

帰ってくるのってちょっと恥ずかしかったりしない

かな、なあんて」

 

え? 恥ずかしい? なんのこと? という顔で

こちらを見てくる。フェイクも、そこはまったく

問題ない、と言ってさっきから手に持っていた

袋から自分の分を取り出した。

 

というわけで、勝敗が気になったエマドは最初の

テルオのところに戻ってくる。

 

どうやら今日はゴッシー教室をこっちの客船で

やっていたようで、ゴシとリョーコもいた。

 

「リアン4段、最後の考慮時間に入りました。残り

時間は1分です」

リョーコがなぜか時間係をやっている。

テルオも持ち時間がほとんど無いようだ。

 

けっきょく、テルオの時間切れで勝負がついた。

感想戦で、ゴシが入ってくる。

「リアンさん、最後時間切れを狙ったようにも

見えましたが」

 

「いえいえそんなことはありませんよ」

「戦というものは、あらゆる勝ち筋を見出す必要が

あります。今回はそれをちょっとお見せしたかったホホホ」

白い扇であおぎながら、大量の汗をぬぐうリアン。

 

長期航行も三回目となると、皆、色々な方法で

時間を潰す。それぞれそれなりに仕事もあるが、

それでも時間が余る場合もあるし、

それ以上に、それほど広くもない船内で、航行中に

頑張りすぎて煮詰まってしまわないようにという

配慮もあった。

 

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