第92話 ゴシの話33

テルオが乗る客船は、一見ふつうの客船であるが、

アラハントのメンバーが乗ってきた客船とは

少し趣向が異なる。

 

居た、ジャージを着たテルオとサムエのリアンだ。

そして、これは、タタミの部屋だ。小さなテーブルを

前に、二人がなにやら難しそうな顔をしている。

 

「あれ、勉強中じゃなかったんでしたっけ?」

「あ、ああ、今は休憩中だよ」

テルオが気づいて答える。

 

パチッ、パチッと小さな木片をテーブルに打ち付けている、

これは、聞いたことがある、ショーギだ。3次元チェスと

似たルールの奴だ。これは平面だけど。

 

「あ、リアンさん二歩」

「おおっと」

リアンが慌てて木片を持った手を引っ込める。

 

「もちろんわかっていますよ、これは、プロでもまれに

二歩を打つという戒めです」

リアンが冷や汗を拭く。

 

リアンは焦っていた。まだ教え始めてから10日も

経っていない。もちろん実力はいまだ私のほうが

上だ。しかし、すでにコマ落ちなしの平手である。

 

最初定石を覚えるのがやっと、だったのが、終盤の

寄せがまだまだだな、という状態になり、そして

いまや序盤、中盤、終盤、どんどん隙がなくなって

来ているのだ。

 

驚異的な上達スピードだ。

 

リアンがコマを打ち、ドヤ顔でグリグリやるのを

見て、エマドはふと隣の部屋を覗いてみる。

 

「あー! おまえらこんなとこで」

 

ケイト・レイ、アミ、ウイン、マルーシャの4人で

テーブルを囲んでいる。

「あ、それポン」

ケイト・レイが変なサングラスを掛けている。

 

「しかし臭っえな」

タバコのお香を焚いているようだ。彼らがやっているのは

マージャンという競技だ。

 

ケイト・レイも仕事柄打つようで強いみたいだが、

どうもアミがダントツで勝っているようだ。

フェイクと一緒にアミの後ろに回り、見てみる。

 

安全牌を常に2、3個キープしているのはまあいいとして、

ツモと読みだ。なぜそこを引いてこれるのかという

ところをどんどん自模ってくる。

 

そして、牌の流れを読むのもすごい。ダメだとみると

すぐアンコやシュンツを切って七対子に持ち込む。

「おまえ、覚えたてだよな?」

「もち」アミが答える。

 

「全自動だから積み込みしてるわけでもないしな」

「イカサマはまだ教えてないよ」

そんなこと教えて大丈夫でしょうかケイトさん。

 

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