第79話 ゴシの話20

ゴシ・ゴッシーにとって木星第4エリアから

第1エリアへの移動はそこそこ有意義な

ものになった。


特に空母側のキッチンでの無重力下での

調理だ。これはもう別世界で、たいへん

勉強になった。ただ、第3エリアに

帰ってから役に立つ知識かどうか、という

ところもあるが。


テルオもたまに夕食に顔を出した。

彼が部屋に缶詰めで勉強しているのは、

都市デザインだ。それも、政治や経済をも

含めたもので、講師はリアンだという。


ライブのテルオコールの謎も解けた。

テルオの動画配信やブログは、第3エリア

などの火星以内より、クリルタイ国の

人々のほうに人気があるということだ。


扱っているテーマのせいだという。

ネットワーク上の配信情報でアラハント

のファンもけっこういるらしいのだが、

下手するとテルオファンのほうが多い。


アラハントが軍と仲がいい理由もわかった。

格納庫で清掃のアルバイトをしていたからだ。

彼らが担当していた第3小隊の機体を演習用

に持ってきているのは、現第3小隊隊員が

他国にいるときに元々使っていた機体を

軍が改めて開発採用することにしたからだ。


得意な機体に乗ったほうがいいと。

そして、今回持ってきている機体には、予備

で募集したパイロットたちが搭乗する予定。

まだ姿を見ていないが。


とにかく、長期航行というのは何をするかを

明確に決めていれば、腐ることなく、とても

快適に過ぎていく。


そして木星ラグランジュポイントの第1

エリアへ到着だ。都市名はトメト。


この都市の最大の特徴は、無重力であること。

構造タイプでいうと、6面ダイス型、

キューブ型、ということになるが、規模が

大きい。1辺が100キロある。


第3エリアにも無重力タイプ構造都市があるが、

そこまでの大きさのものはない。クリルタイ

国では無重力都市は比較的めずらしくない

らしい。


空母は、巨大な立方体の面のだいたい中心部にある、

エアロックハッチの中へ進んでいく。クリルタイ

国にある無重力都市の構造は、10キロ立方の

モジュール都市を縦横高さ方向にそれぞれ

10基づつ接続したものである。


空母は比較的大きいため、最初の港モジュールに

停泊し、客船でその次のモジュールまで進む。

その隣に目的地のモジュール都市があった。

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