第59話 ヘンリクの話20

時間もちょうど深夜2時だ。


「クインさんが霊視してくれるってさ」

ほら来た。エマドがニヤニヤしている。


クインさんはブッディストの中でもかなり

マイナーなミッキョウの宗派らしい。

そして、宗教にあまり関係なく、知り合いに

見える人が多いとか。


何が見えるって?霊だよ、霊。

「ヘンリク君がいいって言えばだよ」

クインさんも乗り気だ。


「いやー、あの、今日はちょっと」

なんかいいのが見えればいいんだけど、何か

悪いのが見えたりしたらトイレに一人で

行けなくなる。この歳でそういうことに

なりたくない。


「あとさあ、好きな女の子とか当てれる

らしいぜ」


まあそれぐらいだったらいいだろう。

クインさんが僕の前に来て、額のあたりに

両手を掲げて目をつむって何か唱える。


「むむっ」

「5人くらい見えますね」

「え、おまえそんないんの?」

「ちょ、ちょっとやっぱこれ止めましょう」


霊も含めた神秘的現象については、科学の

進歩によってかなり解明が進んでいる。

はず、だが、解明が進むごとにわからない

こともどんどん出てきている。


霊感のある人、の中には洞察力がずば抜けて

高い、というひとがかなりの割合で

含まれていたことが研究により解明は

されている。


しかし、それ以外にどうにもまだ、最新の

応用量子力学でもわかっていないことが

たくさんある。素粒子的になにか弱い

相互作用が絡むのかの研究もなされている。


そもそも、脳の仕組み自体、まだわかって

いない部分がかなりある。宇宙世紀の開始

あたりから、意識の領域はほとんど解明

されたといわれているが。


無意識領域の、それも発現がまれな現象

についての解析がほとんどまだ進んでいない。

それは、量子力学でいう観測者の存在が

観測対象に影響を与えてしまうことも

関係する。


観測すると出ないのだ。


「霊感が強いのにもふたつのタイプがあって、

まったく見えないけれど、強いタイプも

いますよ」

クインさんは語る。


見える、というのが論理的にどういった

かたちで見えるのか、ということを聞いて

みたいとも思うが、それを聞いて自分が

見えるようになるのも怖い。


「こういう話すると女の子にモテるってよ」

「詳しく教えていただきましょう」


こうして学生の夜は更けていく。

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