第3話

 ペットボトル、畳まれて起きっぱなしの服が散らばる狭い床の奥に、男がいた。

 男はどうやら、パソコンに向かって、なにかを書いているようだ。

 「次は、イギリスでもいいなぁ。」

男は、ボリボリと、背中を掻いた。さも、気だるそうにゆっくりと立ち上がった男は、意外にも二十代前半くらいの若い男で、前髪の一部だけを赤茶けた色に染めていた。

 男は、小説家を目指していたが、まだ一冊も出版にこぎつけたことはなく、自身のブログにアップした作品に来る、数少ない応援メッセージだけが彼のささえだった。

 男の連載している話は、世界が、なんらかの原因によって崩壊していく、という内容だった。

 

 「…そして、老人は倒れた。」

パソコン画面に規則正しく並んだ文字が、怪しい光を放っていた。

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