122話 動き出した世界、ですか?

 ・・・エリーSide・・・


 式典のゲストなんてなるもんじゃないな・・・。

 今日、心からそう思った。


 理由はこれ。


「・・・と、言うようにエルフ族の姫君が惜しげも無く・・・」


 公爵殿のまったく・・・・終わる気配のない話が続いているせいだ。さっきからイライラが募っている。


 ここで、文句の1つでも愚痴っていれば暫くは我慢出来るだろう。

 だが、今は亜人族の代表として式典の舞台の立っている、そのため迂闊なことは出来ない。


 ま、だからそのせいで余計にイライラしているんですけどね。

 何だか考えたら余計にイライラしてきた。


 --ペシッ


 頭に何か飛んできた。手にとってみると小石だった。


 飛んできたほうを見るとイッセイがめっちゃ睨んでた。

 分かってますよ。いい子にしてますよーだ。


 と、言うことで、ただただ苦笑いしながら時間が経つのを待っている。

 自分の顔が引きつっているのが分かる。

 しかし、公爵殿は自覚しているんだろうか? ダラダラと長い話で場を白けさせていた。校長先生とかがしどろもどろになりながらも喋ってるあれ・・ね。時々無限ループしてる。あれ。意味もなく時間稼ぎで喋るのは止めてほしい。


 って、あれ? 校長先生とかってなんだろう。

 まぁ、良いか。頭の中で勝手に浮かんだものだし、そういうもんだと納得していた。


「と、まぁ・・・」


 公爵殿は、息を次ぐと話を続けた。


 はぁ・・・。

 まだ続くのか。正直、落胆具合が半端ない。


 いっそ、乱入して次に進めようか・・・。

 そう思っていたら私と同じ様なことを考えていた人もいたようだ。


「ほほほ。皆様アーティファクトを御覧ください」

「こ、コラ。カリーナ!?」

「あぁ。アーティファクトが輝いている!!」

「い、イリーナまで・・・」


 --ワアアアアアアアアアアアアア


 カリーナとイリーナ。2人が公爵殿の長話に割って入ってくれた。

 公爵殿が抗議をしていたが、民衆の皆もノリが良い。カリーナとイリーナの二人に同調して盛り上げていた。引くしか無くなった公爵殿はしょんぼりと肩を落として壇上から下がっていった。背中から哀愁が漂っていた。


 まぁ、しょうがないけどね。


 カリーナとイリーナが私の方を見て、『今だ早くしろ!!』ってジェスチャーしてきた。手を思いっきりブンブン振られて、顔もすごい顔してる。

 いい所のご令嬢とは思えない顔だった。


 はいはい。今やりますよ。

 台座の上にあるアーティファクトに近づく。


 私の持っていた『世界樹の種』を元にイッセイが創った新しい宝玉。共同でやったものね。言い換えれば私とイッセイの子供みたいなもの。そう思うと何となくニヤけてしまう。

 ピンポーン!! (※注意:全然違います。エリーの勝手な変換ですので気にしないでください。)


 おっと、トリップしてしまった。

 あんまりジッとしてると怪しまれるので、早く持ち上げないと・・・。



 台座に置かれたアーティファクトを見ると七色の光が優しく漂っていた。

 いつ見てもすごく綺麗。

 私は『虹』を優しく抱き上げると天高らかに持ち上げる。


 っんん? 


 何。民衆の人たちの意志というか、魔力が集まってきて『虹』に集まってきている?

 どんどん光が集まってきていて・・・って、これってマズイんじゃないの?


 って、本当にドンドン光が集まってる!!!!!!!! 

 い、イッセイはどこ? 私にこの子は扱えない。


 暴走する!? お願い早く来て・・・・。


 って、キャア!! 

 背中から誰かに抱きつかれた。



 ・・・イッセイSide・・・


「シーッ」

「ふぃ、ふぃっへい」

「シー」


 エリーの背後に回った際、彼女の口を塞いだ。

 不審に思ったエリーが後ろを振り返りそうになったが、そのまま前を向かせる。

 ちょっと首がグキってなったけど、今は許してね。


 ここで彼女がトチったら式典自体が終わりになってしまう。

 なので何とかそのままで居てもらう必要がある。


「動かないで、今からアーティファクトを開放するから、エリーは力を使ったように演技して」


 コクコク(エリーが頷く)


 俺はエリーの口から手を離し、『虹』に触れる。

 すると『虹』は溜めていた力を開放させていった。


 あっぶねー。もうすぐ暴走する所だった。


 --バシューーーー!!


『虹』に溜まった力を開放すると眩しい光が天に向かって一本の筋が走った。

 まるで何かの追悼の光に見えた。

 街の皆さんと公爵家の皆さんもその光を暫く見つめたまま動かなかった。


「綺麗な光だったね」

「うん」


 エリーが小声で俺に言ってきたので、俺もそれに答えた。


『・・・し・・・し』


 ???


「エリー何か言った?」

「ううん。何にも」


 気のせいか?


『・・・も・・し・・・も・・・し』


 やっぱり何か聞こえた? って、なんじゃこりゃーーー?

 声がした方を見るとモヤモヤした空間が出来ていて、そこには・・・イリーナさんとカリーナさんに似た女性が映っていた。


「「お母様!?」」


 −−おぉー。公爵ご婦人様だ

 −−何だこの映像は

 −−まぁ、おキレイね

 −−ママ。あの人だーれ? 指さしちゃだめでしょう


 と、言葉が聞こえた人たち全員が映像に気がついた。

 しかも、写っていたのは公爵婦人らしい。


『あああー。うん。皆聞こえる?』


「イッセイ。なにこれ?」

「し、知らない」


 何処と繋がったのか知らない。

 しかも意思を持って喋っているし、手を振っていた。

 これって、リアルタイムで繋がっているから出来る現象だよな? 

 そして、あれが公爵夫人らしいけど、公爵夫人って既に・・・。


 理由を知っている人は皆、同じ事を考えていたに違いない。

 物凄く微妙な顔をしていた。しかし、映像から聞こえる言葉に皆が注目した。


『イリーナちゃん。カリーナちゃん。元気? お母さんよー』


 軽! 映像から流れる夫人はこちらの空気を気にすることなく好き勝手に話をしていた。と、思ったが話を聞いていた街の人達やカリーナ、イリーナは涙を流していた。

 どうやら本物の公爵夫人だったらしく、知っている人は微動だにしない。


「おぉぉ、お前今どこから(映ってるん)だ?」


 公爵様が奥さんの映像を見て質問していた。

 動揺しているせいか大分、言葉を端折ってらっしゃいましたが。

 どっからどう考えてもあの世だと思うんですけど。


『あらー。アナタ久しぶりですね。あの変な格好は辞めたのね? 良かったわー。バカっぽかったからやめて欲しかったの。ちなみに私が居るのはあ・の・世・よ〜』


 随分アバウトな会話である。公爵様が氏の案の定予想通りの回答だった。実にあっけらかんとした回答だけに公爵家の面々と民衆の皆さんもどうしたら良いのか分からず皆がポカンとしていた。

 軽いノリっぽく言われたらね。しょうがないね。


「お、お母様は(↑)何故コ(↑)レ(↓)に?(↑)」


 エリーを見たイリーナさんが、指をプルプルさせながらなんとか声にした様な変なイントネーションで喋る。しかも言ってる意味が分からないですね。


『おーい。母さん。ってあれ? ごめん撮影中?』

『あぁー。うん。ダイジョブダイジョウブ。もうすぐ終わるから〜』


 映像の奥側からは男性らしき人の声がした。

 ??? 誰か側に居るのだろうか。


 会場全体がざわついていた。

 敏感な人を中心に会場では微妙な空気が流れ始めている。

 チラッと映ったのはエルフっぽかったけど・・・まさか?


 俺は、公爵家の皆さんを見ると、


 3人とも魁!!○塾の塾長みたいな顔になっていた。


「ね、姉さん。あの人って」

「奇遇ね。妙に見覚えがあるわ」


『あっ、皆〜。覚えてる? 昨年私と一緒に殺されたエルフの執事よ。色々縁があってこっちで仲良くやってるからみんなも仲良くねー。じゃあ、ご飯の準備があるからこれで、あっ貴方のこと嫌いじゃないんだけどあの世って一人だと寂しいのよね。貴方のお迎えのときには私が行くわね〜』


 −−ブツン。


 まるで、テレビを消したようにスクリーンから公爵家の(元)奥様は消えてしまった。いろんな地雷をばら撒きながら。


 俺はエリーを抱いて壇上から舞台裏の方へとゆっくり進む。少し遅れてだが、兄様とイリーナさんとカリーナさんも舞台裏へとやってきた。


 兄様は開口一番に、


「とりあえず式典だけは終わらせようか」


 と、だけ言った。皆が頷く。

 公爵様は壇上で固まって居た。



 ・・・



 式典も無事に終わり、今は公爵様のお屋敷で寛いでいた。いや、グッタリしていたが正しいか・・・。

 皆が応接の間に集まり先ほどの件の反省会を行う予定だったのだが、精神が思った以上に疲れていた様で、結局ダラダラしてしまっていた。


 あの後、式典は速攻で終わらせ街の人達にはとっとと飲みに行くように扇動した。

 代表の奴隷解放式? そんなもん一瞬で終わらせたよ。

 開放役の奴隷さんは舞台裏で事前に奴隷解除しておいて後は「開放終わりましたって」演技してもらうだけにした。

 違う意味で気まずくなった会場では、空気を読んだ民衆の皆が盛り上げてくれたお陰でそこそこの出来に仕上がった。

 呆気に取られたのかテロも無く無事に終わった。

 って、あんな状態でテロを犯しても意味ねーよな。全部あの世の婦人が持っていっちまった。

 なので、亜人の皆を無碍に扱う人は減るだろう。

 最も違う意味で今回の式典は二度と語られることの無い曰く・・付きとなったが。


「疲れたね・・・」

「うん。もうゲストなんて二度とやらない」

「あはは。それは言えてるかも」

「私も出なくていい様になりたいです」


「「ソフィーはお姫様だから無理」」

「ですよねー」


 等とうちの女性陣はグッタリした様子だった。

 皆、育ちは良いはずなんだけど裏の顔はどこもこんなものなのか? リラックス出来てるならいいけど。


 逆に『虹』に釘付けなのが公爵家の姉妹だ。

 再度、あの世とコンタクトを取ろうとしているが『虹』は全く反応を示さなかった。


「ちょっと、イッセイ君。これどうなってるのよ!?」

「イッセイ様。少しだけ母と話をさせていただきたいのです」

「う、うーーん。僕も全てを理解してる訳じゃ無いですからね」


 手に持って見るが特に何の反応も無かった。


「まぁ、母さんも(あの世で)無事みたいだし良いではないか」


 フラフラとみんなのいる場所に現れた公爵様はめっきり老け込んだ。と言うか身体が白くなって色彩を失っていた。

 ま、まぁ。いくら亡くなったとは言えみんなの前で公式に新しいパートナーの紹介とかされればこうもなろうさ。


「ま、まぁ。父様が良いのであれば」

「そ、そうですね。お父様が良いのであれば」

「イリーナとカリーナ。先立たれても相手を敬ってくれる人と結婚しなさい」


 めちゃくちゃ重い一言が来た。

 兄様に遠回しにプレッシャー来たな。


 それだけ言うと公爵様はメイドさんに抱えられ部屋を出ていった。一人で歩けねーのかよ!


「ふぅー。私も精進しなくてはな・・・」


 兄様がこっちを見ながらため息を付いてきた。

 なんですか? ヤブから棒に。何を精進するんです?


「そうだ。イッセイに渡しておくものがあるんだ」


 兄様が取り出したのは、割符だ。割符とはこの世界における通貨の役割を果たす。

 いや、通貨というか電子マネーかな。


 基本的にはギルドや国等から依頼を受け。達成したことで対価として払われるお金が割符に振り込まれる。(当然、商売をしても振り込まれるが)

 で、逆に依頼を出したり商品を買ったりした時にはここから引き落とされるのである。ネックなのが割符の容量には上限があって満タンまで貯まると別の物を持たないといけないのでお金を多く持ちたい人は割符を複数所持しなければならないのだ。

  1本でMAXまで溜まった割符は大体土地で言うなら王都の2等地(平民街)で庭付き一戸建てが建つから・・・2等地で家が4棟建つ計算だ。


 何。何ですか? 計算が雑だって?

 しょうがないでしょ。まともに金なんか使ったこと無いんだから。大体が人にあげたりだったし、食いもんならそこらに走るモンスター食べてましたから。たまにお菓子を買うくらいしか使ってなかったですしね。

 お金なんてほぼ必要無いんですよ。


 なので、改めて机の上に置かれた物を見てみよう。

 割符が4本並べられている。俺は顔をしかめた。


「兄様。お金なら要らないです。特に困ってませんし」


 と言って断る。チラッと三人の顔を確認したが皆同じ様に頷いていた。


「そうか、と言いたい所だがお金は特に問題じゃない。実はその割符が渡したかったんだ」

「割符を?」


 頭に「???」を沢山作った俺達に兄様が笑顔で返してくる。


「この割符。特殊な効果が2つ増えているんだ。まず1つ目は容量が今までよりずっと多いんだ」


 へ、へぇー。容量が多くなったんだー。正直、いらねー。

 これは、期待できそうもないな。断ろ。


「にいさ「2つ目はこの割符はね。モンスターを倒してもお金に変換されるんだ・・・・」」


 what!? モンスターを倒し金が増えるだと?


 実はこの世界、モンスターを倒してもお金を入手出来ない。

 俺がこの事に気づいた時、本当にここは異世界なんですか? って普通に思った。

 

 これって、○QやF○みたいに『RPGの追体験敵を倒して対価を得られる』が出来るんじゃないだろうか? 動き出したな俺の異世界ライフ。


「ちなみに何でモンスターから奪える様になったんですか?」

「詳しくは知らないが、モンスターから出る魔力か何かが通貨の魔力と一致したらしくてね。王都に居る科学者が発見したみたいだよ。名前はイサキだかカサゴだか忘れたけど」


 兄様。それ魚の名前です。


 でも、どうやらこのシステムはミサキさんが発見したらしい。

 これって・・・


「渡すなら公爵家の騎士団の皆さんとかの方が良いのでは?」

「うん。そ・・・」


 --バァン!!


「公爵様!!」


 兄様が何かを言いかけた時、応接間の扉が勢いそのままに叩き開けられ番兵らしき人が飛び込んできた。皆が開いた扉に釘付けである。


「どうしました。騒々しいお客様の前ですよ」


 カリーナさんが番兵の人に言葉を放った。


「も、申し訳ありません。取り急ぎ公爵様まで面通しをお願いします。王都より使者が来ております」

「公爵様はお休みだ。私が代理で聞こう」

「ハッ。では、申し訳ありませんが外までご同行ください」

「何で通せないのかな?」

「当人の希望です。それとお嬢様方はご遠慮願います」


 きな臭い。これはかなりまずい状況の話だと理解した。


「兄様。僕達も行きます」

「なっ!? 今の話聞かれておりましたか?」


 番兵さんが困った顔をしていた。兄様に止めるように見ている。これは、興味本位だと思われたかな?


「兄様。使者の方は相当負傷していると思われます。僕達が治療を行いながら話を聞くのが妥当と考えます」

「話は分かった。一緒に行こうか、では案内してくれる?」


「ハッ」


「私達も」


 イリーナさんが立ち上がり付いてこようとしたが俺が止める。何故なら。


「イリーナ様。使者の方に会うならそれ相応の覚悟を。それと決してネガティブな顔をするのを禁じます。命を賭して・・・・・ここまで来てくれた方です。守れますか?」

「うっ。それならここで待つわ。でも教えて、そんなに酷い話なの」

「懸命なご判断です。兵士さんの件は話の端々から想像しただけです。不敬罪を覚悟で外に来いって言うのは、もう気にしなくていい・・・・・・・・・・ほど虫の息と言う事です。兄様、時間がありません。急ぎましょう」


 兄様と俺達は屋敷の外に急いだ。



 ・・・



 屋敷の外には簡易的なテント建てられそこに人が寝かされているのが分かった。

 そのテントに近づくにつれ匂いと雰囲気で色々察する事ができるし、番兵さんがしきりに近づく事を止めるように催促してきた。番兵さんの事があるので一応、三人の方を見て様子を伺うと普通に『行くよ』と言う様な返事が帰ってきた。


「お疲れ様です。ソフィア=ララ=ガブリエルです。あなたの任務である内容の報告をお願いします」

「おぉ・・・姫様。私は・・・王都防衛隊の者です。くっ」


 兵士さんは息も絶え絶えに話す。

 結構、消耗が激しいな・・


 俺達は常に役割分担を決めており。

 ソフィーとベネが挨拶役、俺とエリーが診断役として務める。

 なので、俺は使者の前に立ち直ぐに診断を始める。身体の半身がケロイド状になっており何かに溶かされた様な感じだ。ここまでたどり着けただけでも奇跡だと思う怪我だった。先ずはアクアを呼び身体を清める。


「アクア」


 姿は見せないが右手からアクアの力を使った水魔法が兵士さんの身体を包み込む。当然、身体に負担が無いようにさせているので、多少は楽になっている筈だ。


 ・・・だが。


 ソフィーと目が合う。ソフィーも分かっているのだ。

 だから彼女は俺を見て頷いた。


「お名前を教えてください」

「お、名前は・・・ジョンソン・・です。あれ。ちょっと体が軽くなってきました」


 すまない。もう助かる見込みのない君を延命させるため麻薬漬けにさせてもらった。痛みが和らいだだけで治してあげられそうもない・・・。


 回復魔法が無いこの世の中を呪いそうになったがそんな時間も勿体無い。


「ジョンソン。ここまでありがとうございます。伝言を聞かせてください」


 ソフィーが満面の笑みを見せて答えると死の淵でありながら皆幸せそうな顔になる。助かった者はより一層王家に忠誠を誓う。そうじゃない者は幸せそうに逝くのだ。


「・・・・・・・・・・」

「!? ジョンソン大義でした」


「いえ。姫様最後に王家のために役に立って幸せ者です・・・」

「・・・っ。くぅ・・・」


 ジョンソンさんは静かに息を引き取った。

 ソフィーはこういう場合必ず涙する。

 他人を敬える気持ちを無くさない彼女は強い人だと思った。最近の俺は人の死に慣れてきている。


 ジョンソンさんは形見を少しだけ取って身柄は手厚く葬らせていただく事にした。王都に行ったら騎士団に渡せば後は良いだろう。


「兄様。僕等はこの後王都に向かおうと思います」

「その方が良いね。今日までありがとう」

「いえ。また、お会いするのを楽しみにしています。では、準備して発ちます」


 俺達はこの場を後にした。



 ・・・アレンSide・・・


「お兄様。彼等は何者ですか?」


 イリーナが屋敷から出てきた。

 王都からの兵士はイッセイの力によって土の棺に収められているからイリーナには見られない。

 後日、埋葬をお願いすると言って他の段取りは済ませていった。その手際は公爵領に駐留する軍より慣れている様に見えた。場数が違いすぎる。と感じた。


「分からないが何かが起こっていて、恐らく彼等はその何かと戦っている」


 そう、自分で口にしたら不思議と腑に落ちた。

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