93話 お助けホワイトの本気? マジですか?
「おら。どうした!」
おじさ・・お助けホワイトの気が膨れ上がる。
「マズイ。皆逃げろ!!」
「遅い!! フンッ。」
−−ドゴッ
振り下ろされたおじさ・・・めんどくさい。もう叔父さんで良いや。
炎を纏った叔父さんの腕が地面に振り下ろされると叔父さんを中心に地面が半径3メートルほど弾けた。
「きゃあ。」
吹っ飛ぶソフィー。
「くっ。」
なんとか堪えるベネッタことベネが破片によってダメージを受けていた。
「つぅ。」
エリーだけが叔父さんの奇襲を察知し、回避行動を取っていた。
叔父さんの攻撃を各々対処にて結果が違った訳だが、反撃には出れない。
そして、先程まで3人が居た場所の地面だが、
「どうした。どうした。ワシへの攻撃が一切無いぞ。」
等と煽っているが3人の初手をきっちり潰したうえでの煽っている。
質が悪い。
戦いの癖で何となくホワイトさんの中身に気づいたっぽいエリーがジト目で叔父さんを睨んでいた。
その後、俺の方を見て何か訴えかけていたので、頷いて答える。
って、今気づくの? 叔父さんの声してたし、何よりあの白いタイツぽいのから叔父さんの顔が少し見えてるじゃないか・・・。
エリーの鈍感さにちょっと驚いた。
だが、叔父さんだと分かったエリーは前に出た。
体に風の魔力を纏い空を掛ける。
--バシュ。バシュ。
スタスターみたいな音をだし背面跳びで叔父さんの後ろを取る。
上手い!
エリーが風を纏って叔父さんに襲いかかる。
一瞬、叔父さんが動けなかったと思ったが次の瞬間吹っ飛ばされていたのはエリーだった。
「きゃあああ。」
「エリー!」
叔父さんが何をしたのか確認したら体から炎が溢れ出している。
その炎がエリーにカウンターを食らわせたのだろう。
叔父さんはエリーに追撃をかけようとするが・・・。
「やらせません!!」
ベネの炎の魔法が叔父さんに向かって放たれる。
「父様。お覚悟を!」
更にソフィーの月魔法が視界を奪う。
ソフィーの補助とベネの炎の魔法。見事な連携によって叔父さんに直撃する。
叔父さんは火だるまになっており膝を付いていた。
魔法属性がカブっている様なのでダメージが多いとは思えないが、足を止めているなら問題ない。
「おめでとう皆のか・・ち・!?」
叔父さんの方から強い気配を感じる。
--ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
地鳴りのような気配の強さだ。
「まだ。終わるには早いんじゃないか? 俺の【勇者の力】を見てくれよ。」
炎に包まれている叔父さんから声がする。
そして、ムクリと立ち上がった叔父さんは炎を纏ったまま。
ソフィーに向かってタックルしていく。
実の娘なのに殺すきか!?
俺も驚愕していた。だが、間一髪でエリーが叔父さんとソフィーの間に入って受け止めた。
「やらせない。」
「ほほぅ。なかなかやるな。だが、まだ甘い。」
その後は叔父さんの一方的な攻撃で押し切られたエリーが体力切れで失速する。
上手く立ち回れば有利なはずだったが、対人戦素人のソフィーとベネの2人が完全に足を引っ張っていた。エリーが倒された瞬間に彼女らの心は折れた。
「ありゃ。これはもう決まってるね・・・。」
「・・・はい。あれではもう。」
メイヤー・・・レッドさんとそんな会話をしている間にソフィーが脱落。
ベネもそんなに遅くならずにやられた。
「ふむ。まだまだ全然だな。敗因は自分たちで考えろ。」
それだけ言うと、叔父さ、ホワイトさんもこちらの方に来た。
その場に残された3人はまだ心が落ち着いていないようだ。
暫くあのままにしておくのが良いと思えた。そのうち話し始めるだろう。
各々思うところが有るんだろうからそのままにしておく。
え? アドバイスしないのかだって?
これは彼女らの問題で壁だ。俺が介入して問題を解決したら簡単かもしれないけど、そんなことしたら余計に3人とも仲が悪くなってしまう。
こういう時はいっぱい喧嘩して、意見をぶつけ合ったらいい。
そうやって生まれる信頼関係もあるのだ。
「まだまだ、ヒヨッ子だな。特にあの2人は対人戦に慣れてない。」
「知ってますよ! まだ訓練を始めて一ヶ月足らずですからね・・・。これからですよ。」
「でも、まぁ鍛えられるだけあいつらはマシだ。問題はお前だろ。」
レッドさんはその無表情のお面の顔を俺に近づけてきた。
笑っちゃいそうになるからこっち見ないで。
と冗談もあんまり言ってられないか・・・。
レッドさんの視線がキツイ。お面越しにも禍々しい気を感じる。
「ははは・・・。」
「まぁ、良いよ。治ったら覚えておきな。」
「はい・・・。」
俺の別メニュー決定のお知らせ。
体が治ったらかなりぎっちりやられるな。
はぁ、気が滅入る・・・。
しかし、確かに今の俺は下半身を封印され体が動かせずにいる。
更に魔力も何らかの要因で練れない。と言うか感じれない。
ヴィルも封印されたままだしどうする事も出来ないでいた。
「どうだ。何か戻る方法とか思いついたか?」
「この国にある【夢見の泉】を探そうと思います。」
「!!?」
お助けレッドが腕組みし、無言を貫く女子3人組を見つめながら俺に話しかけてきた。なので、俺は心当たりのあるものを口にしてみたが、
「ふーん? そうなのか?」
お助けレッドはあんまり興味が無さそうだった。
「話によるとその湖に浸かると魔力が戻るかもしれないんです。」
お助けレッドは返事すらしてくれない。完全に興味が無さそうだった。
いや。アンタが聞いてきたんでしょ?
叔父さんに文句の一つでも言ってもらおうと思ってみたが、叔父さんは真剣な顔をして俺を見ていた。
「その話はどこで聞いた?」
「ここにある本を見ていたらそれらしきものがあると書いてあった本がありました。」
「くっ、そうか・・・。ここはこの国の過去の歴史も保管する機関だった。」
悔しそうな叔父さんを見て申し訳ないと思うが、今の話は嘘である。
そんな伝記は無かった。
実はその話を教えてくれたのは、ゴブリンのリンさんだった。
ある日、病室にいたらメモ帳に文字が浮かび上がった。
--何故。私を無視する?
なんて、文字が急に浮かび上がったので白昼最中に気を失いかけた。
だが、その後の文字で全て解けた。
文字が名乗ったのだ。そこで、ゴブリンのリンさんだと理解した。
魔力が切れている事を悟ってくれたリンさんから聞いたのが、この城のどこかにある夢見の泉の存在。願いが何でも叶うらしいが、その対価も求められるらしい。
その話をカマかけ程度に話をしたら以外に大物が食いついたと言うところだ。
何と灯台下暗しとはこの事か。
あっさりと場所の情報が見つかって少し気が抜けた。
「それならば今から行けばいいではないか。」
メイヤード様が言うが叔父さんは困っていた。
「いや。その場所は王家の者しか入れないのです。」
・・・5分ほど静寂な時間が流れる。
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・で、どう言う事だ?」
メイヤード様が痺れを切らして聞いてきた。
いや、俺も良くわからない。
「ですから、王家の家の者しか入れない場所に有るんですよ。」
叔父さんは再度説明するが、メイヤード様は鼻で笑った。
「だったら、王家の者としてそこに行かせれば良いではないか。」
「それが、家系図に記載が必要でして・・・」
えっ。何その細いチェック。意味ある?
「ちっ。あいつ等が関わってるのか・・・面倒だな。」
えっ、今ので分かるの?
「まぁ、よくよく考えれば良い事か。良かったなイッセイ。お前ソフィアと一緒になれるぞ。どうせアイツがお前を好いてること位知ってるだろ?」
「いきなり何ですか!?」
思わず大声を出してしまった。
向こう側でソフィーとエリーとベネッタがこちらを見ていた。俺が大声出すのが珍しいからだろう。
話し合いが始まったのか、また3人で向き合って話し始めた。
「僕はそんな事考えてませんよ。」
「そうだよ。それだ、イッセイ。前々から言おうと思ってたんだがソフィーの何処が駄目なんだ?」
叔父さんが凄んでくる。
いや。色々駄目だろ。まず、身分が違いすぎる。
そして、冒険者になる予定の俺が姫と一緒になれる訳がない。大体、俺は鏡一途だ。我慢我慢。
「何言ってるんですか叔父さん。悪ノリが過ぎますよ。」
「い~や。悪ノリじゃねーよ。何年も前からずーーっと一途な娘を見てきてるんだ。お前が選ばない事にいい加減腹が立ってきた。」
「いやいや。冒険者になる予定の僕が国の姫様なんて・・・。」
自分で否定してて悲しくなるな。
「カカカッ。別に良いじゃないか。くれるって言ってるんだから一国の姫なら貰っておけよ。」
「メイヤード様まで・・・。楽しんでますよね。」
「半分な。だが、お前は既にこの国に無くてはならん存在になってるのも事実。いい加減腹くくれ。それにお前の歳で将来を近いあった仲なんてごまんと居るぞ。」
それは知ってる。初めてソフィーに会ったとき親ほど離れた貴族と結婚とかそのような事をアイシャから聞いてイラッとした気がする。
でも、俺には・・・
「心に決めた人が居るんです。」
「・・・・。」
「・・・・。」
ふぅ。最初からこれを言ったら良かった。
叔父さんとメイヤード様は固まっているが俺の意志は伝わったはずだ。
「ぷっ。・・・ぷぷっ。」
俺の純情は笑いに変わった。
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