トラックが異世界転生する。
@GHQ
第1話
「今年の夏の気温は38度!ジリジリと肌を焼く暑さが〜」
車体から出るラヂオからはうっとしい夏の暑さについて話されていた
やぁ!僕は某トラック運送会社のトラックのトラ男!!今年で10年目なんだ!!
「よぉ!トラ男!今日もよろしくな!」
僕に話しかけてくる変人は「山田 弘樹」さん!僕と一緒で10年目で今年で三十路
の独身!行き遅れだね!
「さぁ!今日も一仕事するぞ!」
「おー!」と相槌を打つが聞こえない、当然のことだけどね。
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何時間も道路を走り、気が付くと空は赤色に染まっていた。
「そろそろ…終わり…と…」
やったぁ!帰ってガソリンキメたいなぁ!!!
最後の仕事を終わらせて帰路につく。
これが僕達の副業…
本業は…
明くる日の朝、道路を走る近隣住民なら見慣れたトラックが走っていた、信号は赤、横断歩道を渡る人物は高校生であろう少年が1人
しかし、どういう事だろうか?信号は停止の色を示しているのにトラックはスピードを落とさず、車を止めない、反対にどんどんとスピードは上がっていく
「へ?」
少年の眼前には見慣れた車が迫っていた。肌色に緑色のトラックがすぐそこまで来ている、彼は状況を把握するのに瞳孔を揺らしていた。
「あっ_______」
刹那、少年の体が吹き飛ぶ、体には痛み
頭には混乱が、白が黒を埋め尽くすように染まっていく。
そう!これがぼくらの本業!現実世界では平々凡々で1人死んでも別に損害がない人間、主に高校生をミンチにして異世界に送るんだ!!
「今のは、首遣ったし確実だな」
そうだね!かなりの手応えがあったよ!
「今日のノルマは…5人…と」
この仕事さ1人辺り10万も貰えるんだ!かなり美味しい仕事だね!
「残り4人!頑張るぞー!」
「おー!」と叫ぶがやっぱり聞こえない。
________
______
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ノルマ残り1人に差し掛かった所、山田くんが休憩を挟む。
「運転手交代だが頑張れよ!」
運転手の交代とは珍しい…
代わりの運転手は無口で目には生気が宿っていなかった
無愛想っぽいなぁ…
道路を走ること数時間。
目的の場所に着く、夕闇に沈んでいく空は綺麗さと共にある種の恐怖が湧くものだった。
目的地の遊歩道、そこに立つのは少年とは言い難い人間だった、彼はこちらをしっかりと見据えている。
あっ…あぁ…
彼は笑っていた。
やめて
彼は動かなかった。
止まって
彼はそこに立ち尽くしていた。
止まれ
「山田 弘樹」は受け入れていた。
何巡も思考をする、考える、諦める度に再考をする、しかしそれには意味が無く
目の前には彼がいた。
肉が潰れる音、舞い上がり、地面に落ちる音がする。
あぁ…ァァ…
ハンドルは新しい運転手に握られているが不思議と自分の思い通りに体が動く。
「!?おいっ!止まれ!」
彼は焦っていた。
「止まれ!とまれ!」
電柱が車体の前にくる。
「止まっ____」
鉄の塊が何かに激突する音がそこに響いた。
38度、その夏の気温は肌をじりじりと焼くものだった。
冷たくなるはずの体はアスファルトからの熱で暖かくなっていた。
トラックが異世界転生する。 @GHQ
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