風の少年
勝利だギューちゃん
第1話
近所の公園で、クラスメイトの男の子を見かけた。
ベンチに座り空を見上げている。
私は気になり声をかけてみた・・・
「何を見ているの?」
「雪」
「雪なんて、降ってないよ・・・」
「もうじき、降ってくる・・・」
「えっ・・・」
しばらくして、雪が降り始めてくる・・・
「どうして、わかったの・・・」
「空が・・・教えてくれた・・・」
「えっ・・・」
彼の発言は、その時は理解できなかった・・・
「でも、困ったな・・・いきなり、雪が降るなんて・・」
「・・・これ・・・」
彼は、上着と傘を渡してくれた・・・
「でも、君が・・・」
「・・・僕は・・・平気・・・だから・・・」
「でも・・・」
それっきり、彼は何も言わない・・・
「ありがとう・・・」
私は、躊躇したが、ありがたく借りる事にした・・・
次の日、学校で傘を返そうと持っていた。
上着は洗濯したからのほうがいいだろう・・・
でも、彼は学校に来ていなかった。
先生からも、何の連絡もないとのことだ・・・
「無断欠席?」
でも、彼はまじめなので、そんなことはしない・・・
しばらく様子を見よう・・・
でも、次の日も、そのまた次の日も、彼は来なかった・・・
「もしかして・・・」
最悪の選択肢が、頭をよぎる・・・
彼の家を訪ねたが、誰もいなかった・・・
そして、あの公園を通りかかった・・・
すると。彼がいた・・・
あの時と同じように、空を見上げていた。
私は、平然と装い声をかけた・・・
「何を見てるの?」
「・・・太陽・・・」
「今日は、雲に隠れているよ・・・」
「・・・もうじき、顔を出す・・・」
「えっ・・・」
しばらくすると、太陽が顔を出した・・・
「どうしてわかったの?」
「・・・空が・・・教えてくれた・・・」
「・・・前も言ってたけど・・・」
「・・・」
「君は・・・何者?」
私は、訊いてはいけないことを、訊いた気がした・・・
「僕は・・・」
「君は・・・」
「・・・風だよ・・・」
その瞬間、彼の姿は消えた・・・
彼の事は、全ての人の記憶から消えたようで、
誰も知らないという・・・
ただ、私だけは覚えている・・・
彼の私への想いが伝わった・・・
(また、会えるよね・・・)
心の中で呟いた・・・
傘と上着は、その時に返そう・・・
いいよね・・・
風の少年 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます