さくら舞う桜
芽衣奈ひかり
第1話 桜、舞う出会い
3月15日、
引越しの片づけをしていた恵瑠は、とある声を聴く。
((お前の所為で!))
今にも、誰かを呪い殺しそうな、憎悪の塊のような男の声。
「っう……」
恵瑠はその声を聴くと、胸を押さえ、その場に膝を付き苦しみだした。
(またこれか……)
今、恵瑠が受けている痛みを簡単に言ってしまえば、心臓を鷲掴みにされ、強く握られている様な痛み。
そんな、痛みに耐えながらも、恵瑠は近くに有るスマホに手を伸ばす。
しかし、恵瑠の手が届く前に、近くに積んであった段ボールが恵瑠の上に落ちてきた。
「ぐっはぁ」
そこで、恵瑠の意識は途切れた。
「はぁ……何回目だっけ、病院に運ばれるのは」
そんな事を呟きながら、恵瑠は病院内を歩いていた。
すると、恵瑠は長い黒髪に黒く淀んだ瞳を持つ少女に目が留まる。
「桜ちゃん今日も良い天気ね」
「……」
その少女は看護師の女性に車椅子を押されながら、喋りかけられていた。
その場面だけなら、普通の光景だろう。しかし、恵瑠は違和感を覚えた。
それは、少女が看護師の女性の言葉に一切反応していなかったのだ。
(無視しているのか?まぁ、あの目だしなぁ……)
内心、恵瑠はそう思っていると、看護師の女性はめげずに少女に語りかける。
まるで、何時もの事の様に……
「可哀そうよね……17歳で全身が動かないなんて……」
そう言ったのは、恵瑠の隣に唐突に表れた、背中を丸め、白髪のおばあちゃんだった。
「全身が動かない?」
「そう。看護師さんの話だと彼女ALSに幼少期になったらしくてね……」
「ALS……」
恵瑠でも知っている病気の名前だった。
『ALS・筋萎縮性側索硬化症』は重篤な筋肉の萎縮と筋力低下を引き起こす神経変性疾患あり、運動ニューロン病の一種とされている、治療法の確立されていない難病だ。
「そう。それで、あんなに希望の無い目をしているのよ。昔は、元気で明るい子だった……」
おばあちゃんはそう言うと、病室へと帰って行った。
恵瑠は、自然と少女に目が吸い寄せられ、しばらく見つめていると、少女と目が有った気がした。
「!……目が合った?気のせいか」
一人、そう完結させ恵瑠は自分の病室へと帰って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます