Paranoia
韮崎旭
Paranoia
複数形または女性名詞の主格か?
偏執的に狙いをつける夜間の空には何もないから当然答えも引き出せない。誰の声も意味をなさない。意識への過剰な執着がより一層事態を悪化させる。身体活動の連続が生み出す見掛け上のパターンが感情と呼ばれたりする。それは死なないための機能であり。自死のトリガーたりえる機能である。
形態と得体のない主体性を持て余してしまうよ、このような気候では、重大な忘れ物や過失、紛争、おおよそのものが煮込まれた砂塵の皿の中で、呼吸を求めてもがいた腕は今やナイフを自身に向けていた。マヤコフスキーの詩のように、カミソリを待つ喉を裂こうとして?
ここに意志を持っていることが明らかな誤りだと悟る、終電を待つ駅は寒々しく美しかった。感情を述べることの苦心惨憺しているうちに自身が何者かを失念している。
そんなものははじめからないけれど……。
どう見ても齟齬であり整備不良であったようだ。僕の正体がどこかに転がっているという妄想、現代文に取りつかれて、探し回ってしまうのがポストモダン。障子の影には架空の視線。他人の視線を内在化することで非常に不愉快な気持ちに常になれる。電車のつり革は、不安と緑いろの攪拌工となり、知っているはずの単語が雨の代わりに降ってくる。だでもこちらに関心がないことに無自覚な、自意識過剰が喚きだして手が付けられない。
皿に盛った葬送のなかで肉片が楽隊をしている。探し出したノートの中には虚無が詰め込まれている。有限で形ある虚無が。身体活動や電気信号のパターンを私/僕たちは見かけ上の感情とか、情緒、人間性と呼ぶ。あるいはあなたがそうであろうか? 不自然に描かれた災害と戦争、
後ろ向きであることだけでとがめられてみたりして、存在することの負債を払い続けているけれども、何か安定とは対極の確定を求めてやまない渇望は、絶対に充足しない。広場に出かけても、麻酔薬に縋っても、僕は希薄なでくの坊のまま、人工的な明るさに包まれて吐きそうになっている。悲しさを知らないまま、喜びを破棄したまま。
歩いているだけで眩暈がするような言語の海にまだ知らない自我を放り込み、新たな悲惨を連鎖的に生み出して行く不毛な作業。やめることが叶わないのはさがではない筈だそれなのに。
屈折し鬱積した旅程に耽溺している。
Paranoia 韮崎旭 @nakaimaizumi
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